■ 雇用調整の概要と記述項目(目次)

雇用調整とは、景気の変動や業績の悪化などに伴い、過剰となった雇用を従業員の削減や労働時間の短縮で調整することを言います。

 

初期の段階では残業規制、新規・中途採用の停止に始まり、

状況が厳しくなると、配置転換、出向、一時帰休、希望退職者募集と進み、

最悪の場合は整理解雇に至ります。

 

戦う経営者にとってはなんともやりきれない話ですが、

企業には、懸命の努力にもかかわらず、雇用調整に手をつけざるを得ない場合があります。

 

本稿では、比較的強力な雇用調整手段である希望退職の募集、整理解雇及び有期雇用契約に係る雇止めについて述べます。

 

主な記述項目は以下のとおりです。

記述項目(目次)

1 希望退職の募集
    1−1 希望退職の募集に係る基本構想
1−2 希望退職の募集における退職条件
1−3 希望退職の募集実施
1−4 希望退職者募集要領(一例)
2 整理解雇
    2−1 整理解雇の4要件
2−2 整理解雇の基本構想
2−3 整理解雇における退職条件
2−4 整理解雇の実施
3 有期雇用契約の解消
   

3−1 雇止め可否の判断基準と

判例に見る雇止め判断のポイント

3−2 雇止めの実施

 

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T 希望退職の募集
1 希望退職とは
    希望退職は、法的には企業と従業員の「任意の合意に基づく労働契約の終了」を言います。
これを企業側から見れば、「雇用調整に当たり、労働者の自由意志による自発的な退職の申し込みを勧誘する手続」ということができましょう。 
     
2  希望退職の特性
   

@ 希望退職は、合意の上での退職ですから紛争生起の可能性が小さく、また一旦合意すればそれが覆る可能性も少ない。
A 従業員の対応のよっては、人員数の削減目標を達成できない可能性がある。

     
3  希望退職募集の目的
   

@ 純粋に雇用調整、人員削減の手段として行う。

(目的を達成できない場合、整理解雇など他の手段に移行することもある)

A 解雇回避努力義務の履行を充足するために、整理解雇に先立って行う。

(解雇回避努力は整理解雇の4要件の1つ)

 

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T−1 希望退職の募集に係る基本構想
1 希望退職募集の目的 
   

確立した目的は事後の検討の基礎となるものです。しっかりとした目的を確立し、事後の検討を一貫性のあるものにしましょう。


希望退職募集の目的は、会社のおかれた状況により種々考えられますが、一例を挙げれば、以下のとおりです。

  @ 整理解雇を前提に、解雇回避努力の要件を充足するために行う。
A 経営再建等のため、不退転の決意をもって余剰人員の解消を図る。
B 経営効率向上のために可能な範囲で余剰人員を削減する。
       
2  希望退職の募集対象
   

事後の事業運営の構想(青写真)に基づき、募集対象を決定します。


正社員全員を対象とするか、部門や年齢層を限定するか。限定するとすれば、どの範囲に限定するか等について検討します。


この際、性別や国籍などによる差別化は認められません。十分な注意が必要です。


また、事後の事業構想を実現するため、「辞められては困る社員」は募集対象から除外しなければなりません。どのような社員を対象から除外するかについても、事前に検討することが必要です。

       
3 募集する人員数 
   

事後の事業運営の構想(青写真)に基づき、募集人員数を決定します。


この際、社員に提示する「募集要領」に募集人員数を明示するか否かについても検討します。

募集人員数を明示すれば、目標を達成できない場合は整理解雇に移行することもあるなどといった経営陣の不退転の決意を示すことができるなどのメリットがあります。

反面、募集人員に達しない場合、経営陣の体面を傷つけられるなどのデメリットもあります。いずれにしてもメリットとデメリットを総合的に判断することが肝要です。

       
4  募集の時期・期間
   

募集する時期は、希望退職募集の緊急性、事業運営に及ぼす影響などを考慮し、目的を最も効果的に達成できるよう決定します。


募集期間は、会社の規模、募集人員数などにもよりますが、従業員全般の職務遂行意欲や規律に及ぼす影響を考慮し、1〜2週間程度の短期間に設定することが望ましいといわれています。

       
5 予期の如く進展しない場合の対応
   

希望退職の募集は、予期のとおり進展するとは限りません。予期のとおり進展しない場合の対応を事前に概定しておきましょう。

  @ 募集期間の途中で予定人員数に達した場合の対応
      その時点で募集を打ち切る」「引き続き募集を継続し、希望者全員を退職させる」などの対応が考えられます。
  A  希望退職者が予定人員数に達しなかった場合の対応
     

「2次・3次募集を行う」「個別に退職勧奨を行う」「整理解雇に移行する」などが考えられます。希望退職募集の達成度などに応じ、概略の準拠を定めます。


2次募集、3次募集の退職条件をどうするか、整理解雇の退職条件をどうするかなどについても、事前に必要な範囲で検討します。

 

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T−2 希望退職の募集における退職条件

前T−1で検討した基本構想を基礎とし、希望退職の募集に当たり、従業員に提示する退職の条件を検討します。

この退職条件は希望退職募集の正否を左右する重要事項です。

会社の経営状態や財務状況にもよりますが、退職金の増額や給料の積み増し等、魅力ある条件を提示して退職を魅力あるものにすることが重要です。

実務的には、割増退職金をどの程度に設定するかがポイントとなります。

 
1 規定の退職金
    通常は、会社都合退職として支給します。 
     
2 割増退職金
   

再就職の容易性(業種・職種・地域の特性)、対象者の年齢、勤続年数等を考慮して設定します。

この際、事後の事業構想を考慮して非戦力に厚く設定し、非戦力の退職を促進するのも一考に値します。 

     
3 年次有給休暇の買上げの有無・基準
    買上げの義務はありませんが、業務の引継ぎへの影響等を考慮して慎重に決定します。
     
4 経過賞与の支払いの有無・基準
   

支給日在籍を賞与の支給要件として定めている企業が多いと思います。

しかしながらこれを形式的に適用すると、応募に影響を及ぼします。退職予定日が賞与の支給日に近い場合は、対応を慎重に検討します。

     
5  再就職のあっせん・支援
    希望がある場合、再就職の支援を実施するか否かを検討します。
支援方法としては、「他社再就職支援サービスの使用」「有給の出勤不要期間の設定」などが考えられます。
     
6  その他
    離職票の離職理由などについて検討します。

 

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T−3 希望退職の募集実施

1  労働組合等との交渉
   

斎整円滑な実施を期するため、労働組合や従業員等と事前に協議し、理解を得ておくことが望ましいと思われます。

 

なお、1ヶ月に30人以上の離職者を生じさせるような事業規模の縮小等を行う場合は、再就職援助計画の策定が必要です。

この場合には、労働組合等の意見を聴取しなければなりません。

     
2  取締役会の決議
    希望退職の募集は、会社法に定める「重要な業務執行」に該当し、取締役会設置会社の場合は、取締役会議での決議が必要です。
     
3 従業員への説明・面接の実施
   

社員に応募を促すため、対象者全員に対して説明会を実施します。
具体的には、希望退職募集の必要性、募集対象者、募集期間、退職条件、業務に不可欠で応募があっても承認しない者などについて説明します。

 

その後、あらためて対象者全員に対する個別面接を行い、退職条件に関する誤解などがないことを確認するとともに、非戦力者には退職を促し、事後の業務に不可欠な戦力者(応募があっても承認しない者)に対しては、その旨通知します。

     
4 応募受付、承認、合意書の作成
   

合意書の作成は、不可欠なものではありませんが、トラブル防止のため、合意書を作成することをお勧めします。


希望退職の募集においては、労働者が退職を申し出た時点で「合意解約の申し出」となり、「会社の承諾」があって始めて「合意解約が成立」すると解されております。


合意書を作成する場合は、合意書作成をもって法的拘束が生じると解されます。よって、企業サイドとしては、応募受付に伴う退職の承認、合意書作成は速やかに進めたいものです。

 

 

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T−4 希望退職者の募集要領(一例)

中小企業A社は、経営不振のため、雇用調整のやむなきにいたり、「雇用調整実施計画」を策定しました。その骨子は、次のとおりです。

 

雇用調整実施計画(骨子)

1 希望退職の募集及び有期雇用契約者の雇止め(本稿V−2参照)により、余剰人員20名を削減する。

2 希望退職の募集が予期のごとく進展しない場合は、断固として整理解雇(本稿U−4)に移行して、所期の人員削減目標を完遂する。

ここに提示する「希望退職者募集要領(一例)」は、上記「雇用調整実施計画」の骨子に基づくものです。

 希望退職者募集要領(一例) 

  会社は、経済のグローバル化に伴う深刻な価格競争の下、経営方針の転換、コスト削減、製造拠点の集約化等、懸命の経営努力を実施してまいりましたが、この度人員整理のやむなきにいたりました。つきましては、次のとおり希望退職の募集を行います。
1 対象社員及び募集人員
  @ 対象社員
      平成23年8月1日現在、当社に在籍する正社員。ただし、事後の業務運営に不可欠な者等として、会社が別に指定する社員は本制度の適用対象外とします。
  A 募集人員
      10名とします。
2 募集期間及び退職日
  @ 募集期間
     

平成23年8月11日から同月17日まで。

ただし、終了期限は、応募の状況により短縮又は延長することがあります。

  A 退職日
      平成23年8月31日とします。
3 退職金 
  @ 退職金の額
     

以下に示す規定退職金特別加算金を併せ支給します。

ただし、年齢、定年までの月数は、平成23年8月31日現在の年齢又は定年までの月数とします。

    A 規定退職金
       

退職金規定に基づく「会社都合」による支給率を適用して算出した額。

ただし、この額が100万円に満たない者については、一律100万円を支給します。

    B 特別加算金
        30歳未満 基本給×2ヶ月
30歳以上40歳未満 基本給×3ヶ月
40歳以上50歳未満 基本給×5ヶ月
50歳以上58歳未満 基本給×6ヶ月
58歳以上 基本給×定年までの月数×1/4
  A 退職金支給日
      平成23年9月10日とします。
4 説明会及び個別面接
  @ 説明会
    A 募集対象となる社員全員に対し、「希望退職募集要領」について、説明会を実施します。
B 説明会日時
        平成23年8月5日15時〜16時
  A 個別面接
    A 「希望退職募集要領」特に退職条件について、完全にご理解をいただくため、別添の個別面接日程(略)により、個別面接を行います。
B 「本制度の適用対象外として会社が別に指定する社員」については、本面接時個別に通知します。
5 応募手続
    退職を希望する者は、募集期間内に退職願を総務部長に提出してください。
6 その他 
 

@ 退職者は、業務の引継ぎを確実に実施し、所属長の確認を受けてください。
A 年次有給休暇の残日数は、退職日までに消化してください。ただし、未消化の残日数は、各自の平均賃金にて買い上げますので、引継ぎ等業務のある者はそちらを優先してください。
B 雇用保険の受給に関し、会社が交付する離職票の離職理由は「会社都合(事業の縮小に伴う人員整理のための希望退職者募集への応募)」となります。 

 

 

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U 整理解雇

1  整理解雇とは

   

整理解雇は、使用者が経営不振などの経営上の理由により人員削減の手段として行うものでありますが、解雇の種類の中では「普通解雇」に属し、法律用語ではなく、裁判の判例により、浮上してきた用語です。

     
2  整理解雇を巡る法規制
 

@ 労働契約法は、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を要求しておりますが、具体的な内容は明らかにしておりません。ここに、判例法理としての「整理解雇の4要件」がクローズ・アップされる所以があります。

 

A 労働基準法には解雇を巡るいくつかの規定がありますが、ここでは「解雇事由の明示(従業員から求めがある場合、遅滞なく証明書を交付)」「就業規則への解雇規定の明確化(絶対的必要記載事項)」を要求している点に着目する必要があります。

   
3 整理解雇の特性
 

@ 余剰人員を強制的かつ確実に削減できる。

A 訴訟に弱いなど、法的リスクが大きい。

   
4  実務的対応
 

@ 整理解雇は、訴訟になった場合の企業側の勝率が低く、しかも膨大な手間がかかります。このため、希望退職の募集が不調に終わった場合など、やむを得ない場合に限り検討すべきものと考えます。

 

A 就業規則や雇用契約書などに解雇に関する定めをすることが必要です。

     

 ※ 貴社の就業規則に、解雇を行う場合として「事業の縮小その他会社のやむを得ない事由がある場合で……」「天災地変その他やむを得ない事由により、事業の継続が不可能……」などといった解雇規定があるか確認しておきましょう。

 

  B 整理解雇を行う場合には、整理解雇の4要件を確実に充足することが望まれます。
      ※ 最近の裁判例ではこの「整理解雇の4要件」は、やや緩やかに取り扱われる傾向があるともいわれておりますが、訴訟になった場合の経営者側の勝率はかなり低く、実務上はこの4要件を重視して対応せざるをえないと考えます。

 

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U−1 整理解雇の4要件
1 人員整理の必要性
   

会社経営上、整理解雇の必要性がどの程度あったのかが検討されます。

 

かつては、人員削減をしなければ倒産必至とか、このままでは近いうちに経営危機に陥るといった高度の経営危機にある場合に必要性が認められる傾向にありました。

 

最近は経営者の経営判断を尊重し、企業を合理的に経営するためにはやむを得ない必要性があれば人員整理の必要性が認められる場合も少なくないやに思われますが、実務的にはよりシビアに考えておく方が無難でしょう。

特に人員整理後新規採用を行うなどの矛盾する行動をとるのは考えものです

 

2 解雇回避努力の履行
   

期間の定めのない雇用契約では、特別の事情がない限り、雇用はずっと継続するものであり、解雇は最後の選択手段と考えられております。

 

事情によっては、解雇努力の措置が一部猶予される場合もあるようですが、未だこれを計算できるまでには至っていないと考えられます。実務としては役員報酬の削減新規採用の抑制希望退職の募集出向配置転換などなしうる限りの解雇回避努力を尽くしたいものです。

 

整理解雇は労働者に帰責事由のないものであり、職種限定・勤務地限定などの特約がある場合においても、配転・出向などの可能性を追求すべきです。

 

3 被解雇者選定の合理性
   

解雇するための人選基準具体的人選がともに客観的・合理的でなければなりません。

 

例えば、「給与が高額で、体力も衰え気味である」として、単純に高齢者のみをターゲットとするのは、合理性が認められないかもしれません。少なくとも「高度な熟練を求められる業務ではないにもかかわらず、○歳以上の高齢者は給与が高額で、しかも全従業員数に占める割合が極めて高い」といった客観的で合理的な理由が欲しいものです。

 

また、人事考課など具体的な評価に基づくことなく、単に「働きが悪い」従業員を優先的に選定するのも、主観的恣意的と捉えられる可能性があります。このような基準は、懲戒事由に当たる場合などに限定した方がよいのかも知れません。

 

一方で、会社再建のために不可欠な人材まで、解雇の対象にしてはなりません。再建に必要な人材を温存することは、使用者に残された最低限の裁量権です。

 

4 整理手続の妥当性
   

整理解雇においては、手続の妥当性が重視されます。

 

十分に余裕をもって、早期に解雇対象者にきちんと説明・協議し、可能ならば関連会社に就職をあっせんするとか、解雇時期をずらすなど、納得を得るべく真摯な対応をすることが求められます。

 

被解雇者の最終的な同意を得られないまでも、納得を得るため誠意をもって協議を尽くしたと評価されることが大切です。

 

以前は、この「整理解雇の4要件」全てを満たすことが求められましたが、最近は事情によっては4要件を緩和する判決が出ていることが注目されます。ただし、このような傾向なり考え方を実務に取り入れるのは、まだ時期尚早といえましょう。

 

繰り返しになりますが、実務においては当面、整理解雇の4要件を厳格に守るようお勧めします。

 

 

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整理解雇の基本構想/埼玉県さいたま市の社会保険労務士楠瀬労務管理オフィス

U−2 整理解雇の基本構想

会社の現状分析再建計画を基礎とし、解雇人数、対象者の範囲、希望退職の募集など解雇回避努力の成果等を考慮し、最終的に整理解雇する解雇人員数解雇対象者の範囲解雇者選定基準解雇日などを決定します。

 

1 解雇人員数
   

事後の事業運営の構想、希望退職などによる人員整理の成果などを基礎とし、最終的に解雇する人員数を決定します。

 

2 解雇対象者の範囲
   

解雇対象者の範囲は、会社の再建を可能にし、かつ解雇された従業員の経済的打撃を最小にすることを主眼として決定します。

 

このため、以下の事項を考慮する必要があります。

 

  @ 事後の事業運営に必要な基幹要員を確保する。
     

このため、次に述べるような有能な人員は解雇対象から除外します。
・ 会社業務の基幹となる業務に従事する従業員で、勤務成績が良好な者
・ 能力、成績等が特に良好で、会社に対する貢献度大なる者 

 

 

A 解雇による経済的打撃が比較的小さい者を優先する。

 

B 法により解雇を禁止されている者は、対象から除く。

(業務災害・産前産後の休業者及びその後30日以内の者)

 

3 解雇者の選定基準の策定
   

決定した解雇対象者の範囲を基礎に具体的な解雇者選定基準を策定・明示することによって、被解雇者選定の合理性を確保します。

 

この基準の策定が適当でない場合、会社側の主観的判断に基づく選定であると、評価される可能性が出てまいります。従業員の側から、自分が対象者であるかどうかをある程度判定できるような具体的な基準を策定してください。

 

4 解雇日
    解雇にいたる業務予定(解雇予告を含む)、業務の引継ぎ等に要する日数などを考慮し、解雇日を決定します。

 

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2−3 整理解雇における退職条件の検討

1 退職金 
   

希望退職募集の場合とは異なり、通常の退職以上に優遇しなければならないというようなことはありません。

 

しかしながら、会社都合で雇用契約を解除するのですから、多少の優遇処置は必要かもしれません。

 

希望退職の募集など合意退職に応じた者がいる場合、希望退職者との均衡をどうするかも考慮する必要があります。

 

2 年次有給休暇の取り扱い
   

年次有給休暇の残日数の扱いについて、検討します。

 

残務処理引継ぎなどがある場合、有給休暇の残日数の買い上げは必要かもしれません。

 

残務処理や引継ぎなどがない場合、被解雇者と合意ができれば退職時期を早め、有給休暇の残日数を買い上げるのも一考に値します。 

労働者の側から見れば、一定の収入が確保できる上、再就職先が早期に見つかれば、早期再就職が可能です。 

企業側から見ても、早期に退職させることにより他の従業員のモラールに及ぼす影響を最小化できる上、社会保険料の支払いも無くなります。

 

3 再就職のあっせん・支援
   

希望がある場合、再就職の支援を実施するか否かを検討します。

 

なしうる限りの支援をして、被解雇者の納得を得る様努力するのが得策かもしれません。

支援方法としては「他社再就職支援サービスの使用」「有給の出勤不要期間の設定」などが考えられます。

 

4 その他 
   

離職票の離職理由などについて検討します。

一般には「事業主からの働きかけによる解雇(重責解雇を除く)」とします。

 

 

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2−4 整理解雇の実施

1 解雇実施の発表
   

解雇の基本構想、解雇の条件(退職金等)を決定した後、解雇の実施を発表します。

 

発表文の一例は次のとおりです。

整理解雇発表文の一例 

     

平成23年8月20日             

社員各位

     

取締役社長 大山太郎

整理解雇の実施について(お知らせ)

会社は、経済のグローバル化に伴う深刻な価格競争の下、経営方針の転換、コスト削減、製造拠点の集約化等、懸命の経営努力を実施してまいりましたが、なお、苦境を脱せない状況です。
このため、人員整理のやむなきに至り、有期契約社員の雇止め、希望退職の募集等を実施してまいりましたが、所期の人員を削減するには至りませんでした。
つきましては、下記のとおり整理解雇を実施することといたします。
ここに、社員各位のご理解をお願いいたします。

 記

1 解雇人員 5人
2 解雇対象者
    平成23年9月30日現在において、50歳以上の者。ただし、業務上特に必要と認める者(会社の基幹業務に従事し、勤務成績が良好な者)を除く。
3 解雇日
    平成23年9月30日
4 退職金
  @ 退職金の額
      退職金規定の基づく「会社都合」による支給率を乗じて算出した額に、基本給の3か月分相当額を上積み支給する。
  A 退職金の支払い
      解雇日当日、本人が指定する銀行口座に振り込む。
5 その他
  @ 退職者は、業務の引継ぎを確実に実施して、所属長の確認を受けてください。
A 年次有給休暇の残日数は、退職日までに消化してください。ただし、未消化の残日数は、各自の平均賃金で買い上げます。
B 雇用保険の受給に関し、会社が交付する離職票の離職理由は「会社都合」となります。
     

以 上

2 解雇人員の人選 

   

解雇者の選定基準に基づき、解雇者を具体的に絞り込みます。選定基準に基づく解雇候補者が解雇予定者数以上いるときは、絞込みの理由を明確にしておくことが重要です。

 

3 解雇の予告

   

解雇日の30日前までに、解雇を予告します。30日前までに予告できないときは、解雇予告手当を支払います。


解雇予告は、口頭でも結構ですが、確実を期するためには書面で予告するのがよいでしょう。

 

4 解雇辞令の交付
   

解雇日に解雇者に解雇辞令を交付します。これにより、会社と被解雇者の雇用契約は解消されます。


解雇辞令を手渡すことができない場合は、書留郵便にて自宅に送付するようお勧めします。

解雇辞令の一例は次のとおりです。

解雇辞令の一例

平成23年9月30日

山川次郎 殿

埼玉工業株式会社  
取締役社長 大川太郎

解雇辞令 

業績不振のため、貴殿を就業規則第○条×号の解雇基準に基づき、平成23年9月30日限り解雇致します。

以 上

 

 


 

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3 有期雇用契約の解消

 有期雇用契約は、契約期間の満了に伴い雇用契約が当然に終了する、これが原則です。
しかしながら現実の問題として「有期雇用契約の中途解約」「雇止め」の問題があります。

以下、「有期雇用契約の中途解約」「雇止め」について、その概要を述べます。

 

1 有期雇用契約の中途解約 
   

有期雇用契約は、やむを得ない事由がある場合を除き、原則として雇用期間の中途での解約はできません。

 

ここでやむを得ない事由とは、「雇用期間の中途でなされなければないほどの事由」をいい、具体的には、次の場合をいうとされています。

 

      @ 「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」

(労基法19条1項ただし書き、同20条1項ただし書き)

A 「雇用契約ヲ締結シタル目的ヲタッスルニ付重大ナル支障ヲ惹起スル事項」

(大判 大11.5.29)

B 「其事由の存するに拘らず雇用契約を継続せしむることが、一般の見解上著しく不当又は不公平なりと認むべき事実」

(『増訂日本債権法各論・下』鳩山秀夫)

   

 

中途解約の場合は、少なくとも30日前の解雇予告又は解雇予告手当の支払いが必要であるほか、一方の当事者の過失によるときは損害賠償(使用者の過失によるときは、残存期間の賃金相当額の支払いが必要といわれています。)が必要となります。

 

2 雇止め
   

先にも述べたように、有期雇用契約は、契約期間の満了に伴い雇用契約が当然に終了する、これが原則です。

 

しかしながら、契約更新の繰り返しにより、一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然更新を拒否することがあります。これを“雇止め”といいます。


そこで、厚労省は有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15.10.22 厚労省告示第357号・平成20.3.1)を作成して、使用者に対し必要な助言や指導を行っています。

 

具体的には、厚労省のリーフレット有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について』をご覧ください。わかり易く記述されております。

 

 

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3−1 雇止め可否の判断基準と判例にみる雇止め判断のポイント

有期雇用契約が反復更新されるような場合には、契約期間の意義は徐々に薄れ、労働者に更新期待権が発生します。この更新期待権に合理性が認められると解雇権濫用の法理が類推適用され、契約期間の満了のみを理由とした雇止めができなくなり、解雇に相当する理由がなければ雇止めができなくなります。

 

1 雇止め可否の判断基準
   

雇止め可否の判断要素には、次のようなものがあるといわれております。

 

  @ 業務内容の恒常性・臨時性、正社員との同一性
   

・ 業務内容は恒常的なものか、臨時的なものか
・ 業務内容の正社員との同一性が認められるか

 

  A 契約上の地位の基幹性・臨時性
   

・ 契約上の地位は、基幹労働者的か、嘱託・非常勤など臨時的か
・ 労働条件に通常の労働者と同一性が認められるか

 

  B 継続を期待させる言動・制度等の主観的態様
   

・ 正社員への登用制度など継続雇用を期待させる制度等の有無
・ 雇用継続を期待させる言動等の有無

 

  C 契約更新の状況、更新時における手続の厳格性
   

・ 反復更新の有無・回数・勤続年数
・ 更新手続の有無・時期・方法・更新可否の判断方法

 

 

D 同様の地位にある労働者の雇止めの有無等

  

E その他

   

・ 有期雇用契約を締結した経緯
・ 勤続年数・年齢等の上限の設定等

 

2 判例にみる雇止め判断のポイント
   

労務管理を行う実務家の立場から重要なことは、詳細な法律論争ではなく、判例傾向行政機関の指導の方向性を正しく見極め、これを自己の業務に生かすことが大切です。

 

この視点から、雇止め判断のポイントを述べれば、以下のとおりです。

  @ 更新期待に合理性が認められない場合
      原則どおり契約期間の満了によって雇用契約が当然に終了し、雇止めの効力が認められます。
        <更新期待権が認められない事案の特徴>
           

・ 業務内容や契約上の地位が臨時的である。
・ 契約の更新手続が厳格である。
・ 過去に同様の地位にある労働者の雇止め実績がある。

 

  A 実質的に期間の定めのない契約と同視できる場合
      解雇に関する法理類推適用され、結果として雇止めが認められないことが多いようです。
        <期間の定めのない契約と同視される事案の特徴>
           

・ 業務内容が恒常的である。
・ 契約の更新手続が形式的である。
・ 雇用継続を期待させる使用者の言動がある。
・ 過去に同様の地位にある労働者の雇止め実績がほとんどない。

 

  B 反復更新の実態から契約の更新期待に合理性が認められる場合
      実質的に期間の定めのない契約と同視できないが、反復更新の実態から契約の更新期待に合理性が認められる場合は、解雇に関する法理が類推適用され、多くは解雇無効となります。
        <反復更新の実態から契約更新期待に合理性が生じた事案の特徴>
            ・ 業務内容が恒常的である。
・ 更新回数が比較的多い。

 

 

C 雇用契約に特殊な事情があり、契約更新期待に合理性が認められる場合
        雇用契約における特殊事情を考慮し解雇に関する法理が類推適用され、雇止めが認められないことが多いようです。
        <特殊事情により、契約更新期待に合理性が認められる事案の特徴>
          ・ 更新回数は概して少ない
・ 契約締結の経緯等に特殊な事情がある。
           

ex.「臨時社員の契約は例外なく更新されている」「正社員に欠員が生じた場合、臨時社員の中から希望者を登用してきた」(龍神タクシー事件、大阪高判平3.1.16労判581-36)

 

 

D 人員整理を行う場合の「客観的で合理的な理由」……正社員との差異
      正社員と同一である必要はなく、合理的な差異を設け、正社員に先立ち雇止めすることなども認められます。
        ex.雇止めに際し、正社員からの希望退職の募集等の手段を講じずに、先ず臨時員の雇止めが行われてもやむを得ない(日立メディコ事件、最−小判昭61.12.4)。

 

 

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3−2 雇止めの実施

法令の定めではありませんが、実務としては「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に基づき、以下のとおり実施することが望ましいと考えます。


1 雇止めの予告

以下の場合、契約期間満了の30日前までに契約を更新しないことを予告します。

@ 有期労働契約が3回以上更新されている場合
A 1年以下の契約期間の労働契約が更新又は反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
B 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

雇止め通知書の一例

平成23年8月31日

大宮工場

大山花子 殿

埼玉工業株式会社
取締役社長 大川太郎 

雇止め通知書

貴殿と平成23年3月25日に交わしました雇用契約書に記載のとおり平成23年9月30日をもちまして雇用期間満了とし、下記理由により、その後の契約更新を行わないことをお知らせいたします。
なお、ご不明の点などございましたら、人事担当○○までお問合せください。

 記

契約を更新しない理由

事業縮小のため(具体的には、経済のグローバル化に伴う厳しい価格競争の下、深刻な経営不振に陥り、この度製造部門を縮小するのやむなきに至ったため)

 

2 雇止めの理由の明示

雇止めの予告後又は雇止め後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求する場合、遅滞なく証明書を交付します。

有期労働契約を更新しない理由に関する証明書の一例

 平成23年9月5日

大宮工場

大山花子 殿

埼玉工業株式会社
取締役社長 大川太郎  
有期労働契約を更新しない理由に関する証明書
当社が、平成23年8月31日付けで有期労働契約を更新しない旨、貴殿に通知いたしましたが、更新しない理由は下記のとおりであることを証明します。

契約を更新しない理由

事業縮小のため(具体的には、経済のグローバル化に伴う厳しい価格競争の下、深刻な経営不振に陥り、この度製造部門を縮小するのやむなきに至ったため)

 

 

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