サービス残業問題は、これをビジネスチャンスと考える一部士業の先生方の活動もあって、企業経営に支障をきたすことが少なくありません。

痛くない腹を探られないよう、十分な対応を講じたいものです。

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サービス残業問題の解決 姉 妹 ペ ー ジ
0 本記事&姉妹ページのご案内 Ⅰ 残業のルールと管理
Ⅰ サービス(未払い)残業のリスク

 ① 適切な残業管理の阻害要因

 ② 残業の基本方針と基本ルール

 ③ 労使協定と就業規則の整備

 ④ 残業時間の適正な把握 

 ⑤ 割増賃金の算定

Ⅱ サービス残業発生の原因
Ⅲ サービス残業解消の施策
 ① 残業に関する規定の整備
   ② 残業時間の適正な把握
 ③ 管理職や給与担当者の指導
Ⅳ 設例1「あっせん事例」 Ⅱ 36協定
① 労働者側の言い分と分析
 

  ① 36協定の概要

 ② 36協定の協定項目

 ③ 特別条項付36協定

② 会社側の言い分と対応策

Ⅴ 設例2「是正勧告事例」

(是正勧告の概要と対応策)

Ⅲ 時間外労働時間の算定
Ⅵ 設例3「定額残業代」の設計 

 ① 原則的な時間外労働の場合

 ② 1ヶ月単位の変形制の場合

 ③ 1年単位の変形制の場合

 ④ 事業場外みなしの場合

Ⅶ 不払い残業解消法!

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Ⅰ サービス残業・未払い残業代のリスク

労働者の権利意識の向上に伴い、近年、労使トラブルの件数は年々増加傾向にあります。

そして、未払い残業代を巡る労使トラブルは最も発生件数の多いトラブルの類型に属します。

 

ただ、このようなトラブルは円満な雇用関係を保っている間には、あまり発生しません。

多くの場合、退職間際あるいは退職直後に発生することが多いようです。

 

退職していく社員に失うものはありません。

特に怖いのは、次のようなケースです。

① 問題社員を退職させた場合に“不当解雇”など他の問題を絡めて請求してくるケース

② 同時に退職した複数人が、同時に未払い残業代の請求をしてくるケース

 

このようなケースでは、監督官庁に駆け込んだり、訴訟も視野に士業の先生を代理に立てて高額な請求を突き付けてくるなど、小さな会社にとっては負担の大きい厄介な問題となることが少なくありません。

 

 

それでは、未払い残業代を巡る労使トラブルが発生した場合に、会社が抱えるリスクを考えて見ましょう。

1 請求者のアクション

未払い残業代を請求する労働者のアクションとして考えられるのは、

 

① 労働基準監督署への駆け込み

未払い残業代がある場合、是正勧告書や指導票等の書類が交付されます。

これらの書類には強制力はありませんが、現実問題として従うことになります。 

 

② ADR(裁判外紛争解決手続き)の申込み

a 県労働局設置の紛争調整委員会や社会保険労務士会労働紛争解決センター等にあっせん等を依頼(労使ともいずれの側からも依頼することができる)

b 現実策として弁護士や特定社会保険労務士に代理業務を依頼……依頼しなければならないわけではない

c 対応に当たっては、戦うための資料の作成など大きな負担が伴う可能性大 

 

③ 弁護士に会社側との交渉を依頼

a 対抗上弁護士を立てざるを得ないことも多い

b 対応に当たっては、戦うための資料の準備など大きな負担が伴う可能性大

 

④ 裁判所に持ち込む

民事調停、訴訟、労働審判……など(細部省略)

a 弁護士を立てることが多い、又は立てざるを得なくなる

b 対応に当たっては、戦うための資料の準備など大きな負担が伴う可能性大 

 

2 残業代債務の大きさ

月給10万円、平均所定労働時間:174時間(8時間×21.75日……週休2日)、時間外労働10時間/1か月と想定して、2年分(時効は2年)の残業代債務を見積もってみました。

※ 月給10万円は、20万円なら2倍、30万円なら3倍と月給額に応ずる計算(暗算)を容易にするため設定したもの。時間外労働時間を10時間/月としたのも同趣旨。

① 2年間の未払い残業代

10万円÷174時間×1.25×10時間×12か月×2年=17万円強

② 付加金

裁判になった場合、悪質な場合など支払いを命じられることがある。

最近は命じられることが多くなってきた。

その額は、未払い残業代と同額の17万円

③ 合計

17万円+17万円=34万円

 

算定の前提を修正して、仮に労働者の月給を30万円、月平均の未払い残業時間を40時間とすれば

34万円×30万円/10万円×40時間/10時間=408万円

例えば、3名が同時退職し、同時に未払い残業代の請求を起こしたとすれば、残業代債務は約1200万円となる。 

 

そんなことは、“まずありえない”とお思いですよね。

そう!こんなことは滅多にあるわけではありません。

しかしながら、モンスター社員、問題社員、シュガー社員、クレーマー社員などといった言葉が乱舞する時代……、簡単に考えていいのでしょうか。

未払い残業代の請求を手伝う士業の先生方にとっても、1件当たりの額は小さいが“確実に勝てる戦(いくさ)”は美味しいそうです。

(通常の案件は、例えば裁判に勝つなどしなければ成功報酬がありません。)

 

“滅多にないことに備える”それが、危機管理です。

危機管理がなければ、事が起きてから右往左往するだけです。

経営者たる者、しっかり危機管理を行っていただきたいものです。

万全の態勢を築かれるよう願ってやみません。

 

   → 未払い残業代のリスクについて続きが読みたい

 

危機管理について詳しく知りたい方は

   → リスクマネジメントとクライシスマネジメント

 

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 担当 : 楠瀬貞義(くすのせ さだよし)

本文の「2 残業代債務の大きさ」に述べた債務の額は、大げさだと考える方も多いことでしょう。
しかしながら、これには他の問題と絡めた請求があるときは、もっと大きな金額になります。


例えば、士業の先生方に元従業員が、「不当解雇された」と申し出たとしましょう。
証拠さえ整いそうであれば、
「残業代はちゃんと払ってもらってましたか。」
「え?不払いがあった?じゃあ、未払い残業代も一緒に請求しましょう。」
という具合にどんどん高額になります。

戦いに負ければ、不当解雇後の賃金債権、慰謝料、残業代債務などが、請求されることになります。
滅多にないこととは言え、甘く見ないことが肝要です。


これを心配して、経営者に私どもが対策を進言すると、「うちは〇〇だから大丈夫」と上に述べたリスクは自社には無関係だといわれる経営者が少なくありません。

この内、次のような場合は要注意です。

① 「採用時に残業代はつかないと説明し、従業員も納得して入社している」から大丈夫!
② 「基本給は残業代込みだと説明し、相場より高めの額を設定している」から大丈夫!
③ 「残業代は営業手当等各種手当として支給している」から大丈夫!
④ 「管理職には残業代はつかない」と就業規則にも規定しているから大丈夫!
⑤ 「年俸制の者には残業代はつかない」と就業規則にも規定しているから大丈夫!
⑥ 「歩合給部分には残業代はつかない」と就業規則にも規定しているから大丈夫!

→ 残業代込の賃金による労働契約はこちら

 

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Ⅱ サービス残業発生の原因

サービス残業は、どのようにして発生するのでしょうか。

一般には、次のようなことが原因と考えられます。

① サービス残業の強制・黙認

② 労働時間の把握・算定ミス

③ 残業代の算定ミス

④ 定額残業代等の不適切な運用

以下、各ケースについて若干の説明を試みて見ましょう。

 

1 サービス残業の矯正・黙認

労働基準法は、経営者に対し、労働者の労働時間(残業時間)を正確に把握して、働いた分の賃金(残業代)を全額支払うことを求めています。

「指示もしないのに従業員が勝手に残業している(見て見ぬふり)」「自らの能力不足をカバーするために残業しているに過ぎない」「残業代を支払う余力がない、倒産したら従業員も困るはずだ」などの言い訳はまず通りません……。

サービス残業強制又は黙認している場合、残念ですが、裁判になったら会社はほぼ確実に負けてしまいます。

経営者のお気持ち、昨今の経営の実情はお察しいたしますが、このあたりの事情は冷徹にご認識ください。

それではよく見られるサービス残業のパターンを見てみましょう。

① 自己申告抑制型

残業時間を自己申告する制度を採用しているが、一定時間を超える残業の申告を抑制せざるを得なくなるような指導を行う。その結果としてサービス残業が発生する。

② 上限設定型

1ヶ月○時間までというように残業時間に上限を設定し、これを超える時間分の残業手当を支払わない、又は上限を超える残業を申告させない。

③ 代休・振替休日未消化型

休日出勤した場合、代休や振替休日をとるよう指導しながら、業務の都合などで未消化となった休日分の残業代を支払わないまま放置する。

④ 非適合管理監督者型

法に定める管理監督者に該当しない者を管理監督者として取り扱い、残業代を支払わない。 

 

2 労働時間の把握・算定ミス

 (1) 労働時間の把握ミス

労働時間の把握義務は、経営者にあります。

よく見られるミスは、

① 従業員に任せっぱなし

従業員は、残業時間を正確に申告しにくいこともあります。

② タイムカード任せ

始業時刻・終業時刻を把握しなければならないのに、タイムカードには出・退勤時刻しか記録されていない。

※ 出勤時刻から退勤時刻までの賃金を支払うのであれば、それでもOK

③ 労働時間の端数切捨て

労働時間は、1分単位で把握しなければなりません。

15分単位、30分単位で把握していることも少なくありません。

※ 例えば、1分を15分又は30分に切り上げるのであれば問題ありません。

 →  残業時間(労働時間)の適切な把握はこちら

 

 (2) 労働時間の算定ミス

 

時間外労働時間を正しく算定できなければ、正しい賃金計算はできません。

 

よく見られるミスは、

① 「時間外労働とは何か」の理解不十分によるミス

② 算定要領(手順)のミス

多くの場合、1日 → 週( → 変形期間)の順に算定

ここで簡単に述べることは難しいと思われます。

詳しくは、下記ページをご参照ください。

 

 

 

 → 時間外労働時間の算定はこちら

 

3 残業代の算定ミス

よくみられる算定ミスは、

① 1時間当りの残業代(割増賃金額)の算定ミス、

特に月平均所定労働時間の算定ミス

② 歩合給に係る残業代(割増賃金額)の算定ミス又は欠落

③ 固定残業代を超える残業代の不算定

 → 割増賃金の算定はこちら

4 定額残業代等の不適切な運用

このケースには、事業主の故意や悪意が認められないケース も多いようです。

幾つかのケースを見てみましょう。

① 支払額不明型

『月給(年俸)○○万円(残業代込み)』『○○手当て(残業代を含む)』『○○手当て、これは残業代の代わりだよ』としていているケースがこれにあたります。

一体いくらが残業代なのか残業代の支払額が不明であるため、従業員や第三者から見た場合、残業代が適正に支払われているかどうかわからないため、クレームが生じるのです。

紛争になった場合、残業代等を支払っていない(違法)とみなされるケースが多いといえます。

② 定額支払い超過額不払い型

 『月給(年俸)○○万円(残業手当○○万円(○時間分)を含む)』『○○手当て(残業手当○○万円(○時間分)を含む)』『定額残業手当:○○万円(〇時間分)』”というふうに残業代の支払い額を明示しているが、これを超える残業を行ってもその差額を支払わないというケース がこれにあたります。
このケースでは、残業代は全く支払われていない(定額残業代制度が無効)と判断されるケースが多くなっています。

以上のようなケースでは、経営者は“残業代は支払っている”と考えていることが多いのですが、

従業員は“残業代が支払われていない”あるいは“支払われているにしても、いくらが残業代かわからないあまりにも少額である”などと主張するといったようなことが起こりえます。

また、行政・司法当局から厳しい判断くだされることを覚悟しなければなりません。

 

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Ⅲ サービス残業解消の施策 

サービス残業問題が生起した場合、(元)従業員の訴えを受けた行政官庁のお役人、弁護士など士業の先生方あるいは労働組合などいわゆる法律専門家が矢面に立つことが少なくありません。

したがって、企業としても日頃から法律や行政通達などをよく研究して、コンプライアンス重視の労務管理態勢を整えることが極めて重要です。

本項においては、サービス残業をなくすために特に重視すべき事項を述べることとし、サービス残業問題生起後の対応については、第3項以降の設例の中で述べることといたします。

また、就業規則や法定帳簿の整備、労使協定の締結など、サービス残業問題のみならず、労務管理において基本的かつ共通的に重視すべき事項もございますが、本項においてはこれらに触れることなく、サービス残業問題を生起させないという目標に直接的に寄与する事項に限定して記述することと致します。

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Ⅲ−1 残業に関する規定の整備

残業に関する規定の整備は、リスクマネジメントの第一歩です。

 

 

労働時間は、週40時間以内、1日8時間以内とするのが法の定める労働時間の原則です。

この法定労働時間を超えて労働させる場合は、就業規則・労使協定などにその根拠を定めなければなりません。

そうしなければ、従業員に残業を行う義務が生じないからです。

 

その根拠規定の一環として、残業を行う基本ルールを定めてはいかがでしょうか。

残業実施の根拠として

「命令による残業」

「事前承認による残業」

の2つを規定し、いつ、誰の命により行われたのかわからないような残業の絶無を期します。

 

このような規定を設けることにより、管理職による労働時間の管理がスムーズにできるようになります。

① 命令による残業

命令による時間外労働(時間外・休日・深夜労働)は、多くの事業場で必要であり、これについては特に問題ないと思います。就業規則に定めておきましょう。

 

② 事前承認による残業

多くの事業場で、“従業員の自発的意思による残業”が行われていると思います。
しかしながら、自発的意思による残業が、ダラダラ残業未払い残業問題の温床となっている場合が少なくありません。

 

従業員の自発的意思による残業は、“事前の承認”を得て行うことを原則とし、やむをえない場合に限り“事後的承認”を認める事としたらいかがでしょう。

 

残業の管理において注意すべきは、無許可残業をする社員に“黙示の残業命令”があったと主張させないようにすることです。

“労働時間数の適正な把握”

“終業時間後の無許可滞留の禁止”

“管理職への指導の強化”

“職場風土の改革”

などにより、無許可残業をしない・させない気風を確立することが大切です。

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Ⅲ−2 残業時間の適性な把握

労働時間の適正な把握は、サービス残業をなくすための最重要事項です。なぜなら、サービス残業(未払い残業)問題の争点は、残業の有無とその時間数に関わるものであることが多いからです。

 

そして、労働時間の把握は、使用者の責務とされています。このため、労働者側が業務日誌などを根拠として未払い残業代の存在を主張し、企業側がこれに有効な反証をできない場合、労働者側の主張が認められるケースも少なくありません。

 

以下、労働時間の把握方法について、代表的なものを3つ提示いたします。

御社の特性に応じ、適切と思われるものを見出してください。

 

① タイムカード

客観的なデータが把握できるとして、評価の高いものです。
しかしながら、タイムカードの打刻時刻は、出退勤の時刻を記録するものであることが多く、必ずしも労働時間(始業・終業時刻)を正しく反映したものとは言えません

 交通事情などにより、かなり早めに出勤したり、終業後も雑談する者なども多く、労働時間と在社時間の差が無視できないこともあるでしょう。

よって、タイムカードによって労働時間を正確に把握しようとすれば、実際の業務開始時及び業務終了時に打刻するよう指導することとなります。

タイムカードの備え付け位置などによっては、この指導がギスギスしたものに思えることもありましょう。

タイムカードに似たものとして、IDカードやパソコンのログ記録を使用することも考えられます。

 

② 自己申告制

この方法は、業務開始時刻及び業務終了時刻の認識について、個人差が生じ、また上司から明示若しくは黙示のプレッシャーを受け、適正な時刻を申告できないという難点が指摘されております。

この方法を採用する場合、人事部門により、定期的な点検を行うなどの適正化措置を講ずることが必要でしょう。

 

③ 自己申告制とタイムカードの併用

この方法は、自己申告を主体とし、タイムカードによってその妥当性を評価するのが一般的でしょう。
即ち、自己申告による時刻とタイムカードよる時刻に大きな相違がないことを確認するとともに、大きな相違がある従業員については差異が発生する要因(理由)を明確にして記録を残すなどの方法をとります。
 

※ いずれの方法による場合においても、日々の残業時間は1分単位で把握しなければなりません。

日々の労働時間を、例えば30分単位で切り上げ、切捨てすることは認められておりませんのでご注意ください。

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Ⅲ−3 管理職や給与担当者の指導

管理職の指導


自部課の成績を良く見せかけるため、部下に明示又は黙示の圧力をかけ、部下に正確な労働時間を申告させないようにする管理職がいるのも事実です。

 

これは、労働時間の自己申告制を採用している場合に多いのですが、タイムカードを採用している場合にも業務終了前に打刻させることがあるようです。

 

これは自己の職務に熱心なあまり、ツイツイそうしてしまうのでしょうが、このような行為は会社の規律を乱し、部下の会社に対する信頼を損なうばかりでなく、労働紛争となった場合これを解決するために多くの損害をもたらすこともありえます。

 

適切な労働時間の管理について、管理職を指導するとともに、適正を欠く場合には管理職といえども懲戒処分を検討することが必要です。

給与担当者の指導


給与担当者も「給与業務について正しい知識がないために、誤りを犯す」「会社の方針(例えば、残業の削減)に従い、誤った給与計算を平然と行う」「誤りと知りつつ、前任者からの引継ぎどおりに業務を行う」などの事例が認められます。

定期的に担当を決めて指導を徹底するなどの措置が必要です。

社労士など専門家のチェック・指導が受けられれば、有利です。

 

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Ⅳ 設例1「あっせん事例」

本事例は、自主的に残業を行っていた労働者が、過去の残業代の支払いを求めて県の労働基準局長にあっせんを依頼したという事例(フィクション)である。  

Ⅳ−1 労働者側の言い分と分析

労働者側の言い分


  • 私は仕事が遅いので、これをカバーするためここ数年、ほぼ毎日、早出と居残り残業(約2〜3時間/日)を継続的に行ってきた。

 

  • 私は正社員の残業代は基本給その他に含まれていると理解していたが、最近になって、基本給や各種手当には残業代が含まれていないこと、会社には過去の割増賃金についても支払い義務があることを知った。

 

  • 会社は、「残業を命じたことはない」「早く来る必要はない」と指導している」といっているが、直属の上司は「やり方を工夫しろ」のほか、「仕事が遅いのなら早めに出勤しろ」といわれたこともある。   また、残業をしていると「熱心に仕事をしてくれてありがとう」と上司からねぎらわれたこともある。 このことから、会社は私が残業を行っていることを知っているはずである。

 

  • 残業の事実と時間は、タイムカードを見ていただければわかるはずである。

 

  • 私の給与は、基本給20万円、精勤手当1万円、家族手当2万円、通勤手当1万円の24万円である。よって、時間単価:1,379円、年間の所定労働日数:261日、残業時間:1日平均2.5時間として、入社以来3年分の残業代:3,374,241円の支払いを求める。

  • 私は引き続きこの会社で継続して勤務したいので、無理な要求をするつもりはないが、働いた分の賃金は支払ってもらいたい。

労働者側の言い分の分析


  • 労働者側は、未払い残業代の請求を主目的とする一方、継続勤務を希望し無理な請求を控える意向と考えられ、この線に沿って遅延損害金(年12.5%)の請求をしなかったものと解される。

  • 労働者側は、会社との交渉が円滑に進まない場合、労働審判を請求するか、訴訟に移行する可能性が大である。    この場合、遅延損害金のほか、付加金相当額を併せ請求することとなろう。

  • 労働者は、早出出勤の必要はないとの会社側の指導を認める一方、仕事が遅いのなら早めに出勤しろとの上司の指導による残業の認定や残業にねぎらいの言葉をかけるなど会社側の残業の黙認を強く主張してくる公算が大きい。   これらの主張を会社側が明確に否定することができない場合、ある程度主張の妥当性を認定せざるをえない可能性がある。

  • 労働者側はタイムカード以外に労働時間を把握できるデータがない限り、タイムカードによる労働時間の把握を主張する公算が大である。 

​​​

  • 労働者側は、賃金の時間単価の算定に家族手当や通勤手当を含めるなど、法令の規定を上回る額を使用している。   法令に規定により算定される時間当たりの賃金単価は、1,207円である。

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Ⅳ−2 会社側の言い分と対応策

会社側の言い分


  • 就業規則で残業は事前承認制(止むを得ない場合に限り事後承認可)を採用している。

 

  • 当該従業員は、過去において残業を申請したことがなく、また、「早く来る必要はない」「終業後は速やかに退社すること」など、残業をしないよう指導しており、残業代の請求は認められない。

 

  • 人事考課において“量的成果:劣る”と評価されているなど、当該従業員の仕事は一般に遅い。

 

始業前や終業後の時間外労働があるとしても、それは当人の能力不足を補うための自主的なものである。

 

  • タイムカードは勤怠管理に使用しているが、残業時間の管理には馴染まないものである。

交通事情を考慮して、始業前30分以上早く出勤する者や終業後も友人と待ち合わせをしたりやゲームなどを楽しんだりする者もいるからである。

会社側の対応策


1 代替案の列挙

会社側の代替案(オプション)として、次の2案を列挙し検討する。

① 労働者側の主張を否定し、全面的に争う。     ……O−1

② 決定的な争いを避け、妥協により早期解決を図る。……O−2

※ O−1、O−2の『O』はオプションの略。例えばO−1は、オー・ワンと呼称する。
 

2 各代替案の分析

(1) O−1 (全面対決案)

本代替案の狙いは、就業規則や上司の指導を無視して自主的に行ったにすぎない残業代の請求企図を破砕し、社内の規律を引き締め、同種事案の再発を防止するにある。

 

よって、会社としては、訴訟に発展することを視野に入れ、一切の妥協を拒否することとなろう。よって、あっせん案は拒否(あっせんへの不参加を含む)、労働審判がなされる場合も異議を申し立てて訴訟に移行することとなろう。

 

この際、あっせん、労働審判、裁判の各段階を通じ、以下の3点を一貫して主張し、残業の存在そのものを否定(時間外労働があるとしてもそれは能力不足を補うための自主的なもの)することとなろう。

  • 残業は事前承認制を原則としているが、一度たりとも当該労働者から残業の申請がなされた事実がない
  • 再三にわたり、残業をしないように指導している
  • タイムカードは、勤怠管理のために設置しているものであり、残業時間の管理には馴染まない

 

これに対し労働者側は、「仕事が遅いのなら早めに出勤しろ」と指導されたこと、また残業中に上司からねぎらいの言葉をかけられたことなどを根拠に、黙示の指示による残業であったと主張することとなろう。

また訴訟に移行する場合、遅延損害金(年12.5%)及び請求金額と同額の付加金の支払いを併せ請求する公算が大きい。

 

裁判の結果、双方の主張がどの程度認められるかは不透明である。

時間外労働は、労働者の自主的残業であるとの主張が認められる可能性もある。

しかしながら、会社側が早出出勤の指導時間外労働に対する慰労などを全面的に否定できない場合、黙示の残業命令があったと認定される公算も否定できない。

また、タイムレコーダ以外に、労働者の労働時間の記録がないのも弱点である。

残業代3年分の主張に対しては、時効を援用し、最大でも2年分の支払いが限度とを主張することとなろう。

 

労働者側の主張(黙示の残業命令)が全面的に求められた場合、残業代のほか、遅延損害金更には付加金の支払いが必要となる事態も考えられる(この場合のおいても残業代の時間当たり単価は、会社側の主張が認められるであろう)。

 

いずれの場合においても、裁判に全面勝訴する保証はなく、費やする時間的・金銭的損害も無視しがたい。

一方、敗訴した場合、社内の規律や士気に及ぼす影響には無視できないものがある。

 

(2) O−2 (妥協による早期解決案)

本代替案の狙いは、勝敗が不透明で、時間的・金銭的負担の大きい裁判をさけて、金銭的解決を図るにある。

 

この場合においても、O−1と同様に「時間外労働があるとしても、それは能力不足を補うための自主的残業であること」「タイムカードは、勤怠管理のためのものであり、残業時間の把握には馴染まないこと」を主張することとなろう。

 

一方、黙示の残業指示がある等の労働者側の主張に対しては、無承認残業である等とやわらかく反論するに留め、妥協の余地を残すこととなろう。

また、「3年分の残業代の請求に対しては、時効を援用し2年分以下とすること」、「賃金の時間単価は、算定の誤りを正し、1,207円」とするよう主張すれば、これは認定されよう。

残業時間については、労働者側の主張を全面的に認めるわけには参らないものの、調停案に沿って解決を図ることとなろう。

 

残業時間:2.5時間/日(労働者側の主張どおり)、賃金の時間単価:1,207円、残業代の算定対象期間:2年として計算すると、労働者側の請求額は1,968,919円となる。

しかしながら、会社側が「自主的残業である」、「タイムカードの記録は残業時間の管理を目的としたものではない」と主張することにより、あっせん案では、残業時間はより小さく削り込まれることが期待できよう

 

なお、残業の事前承認制(止むを得ない場合に限り事後承認可)と、無許可残業の禁止を徹底することにより、同種事案の再発を防止することは可能と考えられる。

 

3 結 論

 

(1) 採用案(会社の方針)

決定的なを避け、妥協により早期解決(金銭的解決)を図る(O-2)

(2) 理 由

  • 労働者側と全面対決し、裁判を戦ったとしても確実に勝訴できるとの確証がない。
  • 労働者側も継続勤務を希望しており、リーズナブルな金額での金銭的解決が期待できる。
  • 残業の事前承認制(止むを得ない場合に限り事後承認可)と、無許可残業の禁止を徹底することにより、同種事案の再発防止は可能である。

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Ⅴ 設例2「是正勧告事例」

会社の労働者が労基署に駆け込みを行い、残業代の未払いを訴えたため、「申告監督」が行われ、「是正勧告書」が交付されたという事例(フィクション)です。

この事例を通じ、是正勧告への対応を検討してみましょう。   

是正勧告の概要


貴事業場における下記労働基準法違反については、それぞれ所定期日までに是正の上、遅滞なく報告するよう勧告します。

① 労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)違反

  • 労働者山川太郎ほか2名について、平成○年○月分賃金における時間外労働の割増賃金が適正に支払われていないこと。
  • 是正期日……略

 

② 指導事項

  • 他の労働者についても割増賃金が適正に支払われているかどうか点検し、適正に支払われていない場合、その差額を支払うこと。
  • 以下略

是正勧告への対応策


1 是正勧告への対応に当たっての基本的考え方

是正勧告書の交付は、「行政指導」であり、これに従わなくても罰則はありません。しかしながら勧告書に書かれていることは、罰則のある法令違反事項そのものであるので、本来の違反行為をもとに検挙・送検されることがあります。

 

したがって、勧告書に書かれていることは、事実上それに従って改善を図る必要があります。

 

(1) 特定の氏名、労働日数・労働時間、支払い金額などが明示されている場合

労基法37条違反(割増賃金)については、「山川太郎氏ほか2名」「平成○年○月分賃金」「時間外労働の割増賃金」とかなり具体的に指摘されております。

 

換言すれば、いつでも刑事訴追できる準備が整っていることを示しています。

よって、これについては絶対に従う必要があります。

 

しかしながら、このような具体的指摘を行う場合、多くの人員・期間について具体的に指摘できるほどの調査を行うことは一般に困難であり、特定の人物につき、限定された期間分の是正を求めることが多く、金額的にも比較的少額にとどまることが多いものです。

 

(2) 遡及期間の記載がある場合

遡及期間が3ヶ月以内であれば、勧告に従うのが得策です。
明確な根拠はありませんが、3ヶ月が割増賃金遡及支払い期間の相場とされているようです。

 

遡及期間が長期にわたり、経営上支払いが困難な場合は、従業員から「金○円の支払いをもって、会社と従業員の間に債権債務がないことを確認する」旨の「放棄書」を提出してもらうことになります。

 

なお、賃金債権の消滅時効は2年ですので、時効を援用すればこれ以上長期にわたり遡及払いする必要はありません。

 

2 割増賃金の未払い額の確定

事業主の責任において、未払い額を確定することになります。

 

時間外労働時間について、一切の記録がなく推計もできない場合は、労働組合又は労働者代表との協議により、解決金を支払うことにより解決することも止むを得ないと考えられます。

この場合は、「一定額の支払いにより一切の債権債務がなくなる旨」を確認する文書を取り付け、これを添付して是正報告することとなりましょう。

 

3 清算同意書の取り付け

清算に当たっては、清算額、支払い期日、支払い方法を示して、各労働者から清算同意書を取り付けましょう。
こうすることにより、後日労働者が再度立ち入り調査を求めるなどの問題の再燃を防止することができます。

4 是正報告(概要)

平成○年○月○日貴署○○監督官から是正勧告書により改善を指摘された事項については、下記のとおり改善しましたので報告します。 

 

① 労働基準法37条違反

平成×年×月×日、当社の労働者○名に対し、過去2年分の割増賃金総額○円を支払いました。

 

② 指導事項

平成×年×月×日、上記①項の金額を支払いました。

詳細は、別紙清算同意書(略)、割増賃金額一覧表(略)のとおりです。

 

 

 

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Ⅵ 設例3「定額残業代(残業代込みの賃金)」

中小企業においては、残業代込みの賃金額を設定し、労働契約を締結している事例がよく見受けられます。

ところが、定額残業代に関する知識が乏しいために、正しく設定・運用ができず、未払い賃金の発生を見ているケースも少なくないようです。

ここでは、設例を通して定額残業代(残業代込みの賃金)の設定要領を考察してみましょう。

残業代込みの賃金額の試算


人事担当者A氏は、社長から月給16万円(月45時間の残業代込み、通勤手当含まず)で正社員1名を募集できるかとたずねられた。

A氏は、早速検討に取りかかった。

1 埼玉県の最低賃金額を満足するかの検討

  • 所定労働時間:40h/W、8h/日、1年:52Wを前提に、1ヶ月平均所定労働時間を算定すると約173時間となる。
  • 時間外労働にかかる割増賃金を25%とすると、月給16万円は約230時間(173時間+45時間×1.25)分の賃金となる。 
  • これをもとに、1時間あたりの賃金額を算定すると695.7円となり、埼玉県の最低賃金額(750円)を下回る。
  • よって、社長案のままでの募集はできない。 

 

2 月給16万円とした場合、何時間の残業が可能 かの検討

  • 固定給:750円×173時間=129,750円
  • 残業代:160,000円−129,750円=30,250円
  • 残業可能時間:30,250円÷(750円×1.25)=約32時間

 

3 月45時間の残業を可能とするための月給額(残業代込み)の検討  

残業代:750円×1.25×45時間=42,210円

残業代込みの月給の額:129,750円+42,210円=171,960円

 

 

残業代込みの賃金額の決定


1 A氏の意見具申

以上の算定結果をもとにA氏は次のとおり意見を述べた。

  • 月給(残業代込み)を16万円とする場合、固定残業代による残業時間は約32時間に制限される。
  • 月45時間の残業を可能にするためには、月給(残業代込み)を約17.2万円強(月平均所定労働時間には、端数があり173時間を若干超えることを考慮)とする必要がある。

 

2 社長の決心

A氏の検討結果を聞いた社長は、月給17.5万円(基本給:13.2万円、固定残業代:4.3万円)で正社員を新規募集するに決した。

※ 若干の付言事項

① 給与明細には、基本給:13.2万円、固定残業代:4.3万円(時間外労働45時間分)と明示することが必要です。
② 固定残業代を支払う場合も、月々の残業時間をしっかり把握し、実際の残業代が固定残業代の額を超える場合は差額を支払うことが必要です。 
③ 上記のような制約のある固定残業代にどのような意義があるでしょうか。

筆者は、残業代込みの賃金額を従業員に明示できる意義は大きいと考えます。

それは、固定残業代分は確実に従業員の手取り額として保障されるからです。

④ 固定残業代を支払うと、残業時間を極力少なくして、固定残業代をそのままもらおうという心理が働いて、結果的に残業時間が少なくなるという効果もあります。

本例では、45時間の残業を考慮して、4.3万円の固定残業代をつけたのですが、労働者が例えば35時間の残業で45時間分の固定残業代を得ようとすることが考えられます。

ところが、固定残業代がなければ、どうでしょう。できるだけ残業代を稼ぎたいと考える従業員は、ダラダラ残業をして月に60時間も残業するかもしれません。どちらがいいでしょうか。

 

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Ⅶ あきらめない!不払い残業解消法

「残業代はほとんど払ったことがない。」

「法律通りに残業代を支払ったら、負担が大きくなり過ぎて、会社がつぶれてしまう。とても無理!」

「サービス残業の解消なんて夢のまた夢だ。」

こう考えておられる事業主様は意外に多い。

しかし、こんな問題を解決するのが、コンサルタントたる社労士の使命です。

全部解決できるとは申しませんが、多くの場合解決できます。

どうかあきらめないで、このページを読んでください。

 

1 不払い残業となるケース

以下はすべて完全不払い残業となります。

① 支払えないので、残業代なしで労働契約を締結した。

② 残業代込の賃金で労働契約を締結した。ただし、幾らが残業代なのかを明示していない。

③ 残業代は営業手当など、各種手当に含めて支払っている。ただし、幾らが残業代なのかを明示していない。

④ 定額残業代(支払額は明確)を支払っている。ただし、定額残業代の額を超える残業があっても追加払いはしていない。

⑤ 歩合給は成果(例えば売上高)にコミッション率(賃率)をかけて支払うものであるから、残業代は必要ないと考え、全く支払っていない。

<若干の解説>

1 ①のケース

残業をさせても残業代を支払わないのは、明確に労働基準法違反です。

所定労働時間を超えて労働させれば、必ず残業代を支払わなければなりません。

法定労働時間を超えて働かせれば、時間外労働割増賃金が必要です。

2 ②③のケース

幾らが残業代なのかを明示しなければ、法定通りの残業代を支払っているのかどうか検証できません。

最近の判例では、残業代部分が幾らかだけでなく、何時間分であるかも明示しなければならないとなっているようです。

3 ④のケース

このケースは特に注意してください。

「定額残業代を支払っているのであるから、全額不払いではない。よって、実際の残業代との差額を追給すれば良い。」と考えがちですが、

最近は「定額を超える残業代を支払っていない場合は、定額残業代制度そのものを無効」とするのが、最近の判例の傾向です。

4 ⑤のケース

「歩合給は成果に対して支払うものであり、残業代は不要のはず。」という考え方も心情的には理解できますが、

現行制度下では残業があった場合は必ず残業代を支払わなければなりません。

2 不払い残業解消の方策

 (1) 固定給(基本給)の会社

① 基本給の額を引き下げるとともに、残業代を法定通りに支払う。……A案

具体的には、残業代に見合う額だけ、基本給を下げる案です。

ア A案の利点

・ 人件費の総額は従来の額と大差ないと考えられるので、経営的見地からは無理なく移行できる。

イ A案の問題点

・ 不利益変更となるので、従業員の同意を得る必要がある。

・ 従業員から見た場合、残業代の額は変動するので手取りの収入が減少する可能性がある。

・ 従来からの基本給の額が低額で、残業代相当額を十分に控除できない場合は、新たな給与原資が必要となる。

※ 例えば、従来の固定給(基本給)の額が15万円、最低賃金(H28年埼玉:845円)から導かれる基本給の額が14.7万円の場合、残業代相当額として控除できる額は、3,000円(=15万円−14.7万円)しかない。3,000円で残業代を賄うことはほとんど困難である。

一方、従来の固定給(基本給)の額が18万円ならば、残業代相当額として控除できる額は3.3万円(31時間分の残業代に相当)となり、A案の有効性はぐっと高くなる。

以上、計算過程は省略するが、考え方はご理解いただけたと思います。ご質問があればご遠慮なくどうぞ!

ウ A案の評価

従来の手取り額が保障されないので、従業員の理解を得ることが難しい。

② 基本給の額を引き下げるとともに、引き下げた額と同額を固定残業代として支給する。……B案

従来の基本給の額=新基本給+固定残業代とし、従来からの手取り額を保障する案です。

ア B案の利点

・ 人件費の総額は従来の額と大差ないと考えられるので、経営的見地からは無理なく移行できる。

・ 手取り額が減少しないので、従業員の賛同を得やすい。

イ B案の問題点

・ 不利益変更とも言えるので、従業員の同意を得る必要がある。

・ 従来からの基本給の額が低額で、十分な額を定額残業代に転用できない場合は、新たな給与原資が必要となる。……A案の場合と同趣旨

ウ B案の評価

・ 手取り額が減少しないばかりか、残業時間が多い場合は収入増になり、従業員の同意を得やすい。

③ 総合結論

B案を採用することにより、不払い残業を解消できる可能性が大。

 (2) 歩合給の会社

歩合給が多くてもコミッション率(賃率)を若干下げることにより、固定給(基本給)主体の会社と同様の施策で不払い残業を解消できる。

今、オール歩合給制、月の総労働時間200時間、月間残業時間40時間、割増賃金率25%として、一例を示すと下表のとおりである。

売上高 従来の歩合給賃金 新歩合給賃金
賃率 歩合給 新賃率 歩合給 残業代 合計
2,000,000 20% 400,000 19.1% 382,000 19,100 401,100
1,500,000 300,000 286,500 14,325 300,825
1,000,000 200,000 191,000 9,550 200,550
500,000 100,000 95,500 4,775 100,275
 割増賃金1.25のうちの「1」の部分は、歩合給の中に含まれている。
よって、ここでは割増部分(0.25)だけを残業代として計算した。
 残業代=歩合給の額×(40h÷200h)×0.25

3 社労士から一言

現代は、問題社員、モンスター社員、クレーマー社員が跋扈(バッコ)する時代。

クレーマー社員は、退職間際に弁護士や行政当局を活用してクレームをつけることが多いのです。

よって、安定した経営を維持するためには、小規模企業といえども"賃金管理のコンプライアンス"は不可欠です。

よろしかったら、サービス残業の解消に向かって取り組んでみませんか。

 

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