■ 労働・社会保険と企業経営

このページにおいては、企業経営における労働・社会保険の意義について検証します。

 

具体的には、労働・社会保険の保険料、加入しないことによる企業経営上のリスク、保険の使用をめぐる誤解などを考察し、社会保険労務士としての意見・見解を導き出します。

 

 

労働・社会保険と企業経営(記述項目) 

0 労働・社会保険と企業経営
1 労働保険と企業経営 
  1−1 労災保険に加入しないリスク
  1−2 雇用保険に加入しないリスク
2 社会保険と企業経営 
  2−1 社会保険に加入しないリスク 
3 労災保険・健康保険の適用 
  3−1 通勤災害で労災保険を使用しなかった事例 
  3−2 労災保険をめぐる誤解 
4 ま と め 


 

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T 労働社会保険と企業経営

ご案内のとおり、労働保険には労災保険と雇用保険があります。

 

 

労災保険は、業務災害通勤災害に対して必要な保険給付を行うこと等を主たる目的とし、雇用保険は、労働者の失業等に対して必要な給付等を行うことを主たる目的としています。

 

詳細は省略しますが、ほとんどの事業が両保険の適用事業であり、一部を除き雇用する労働者は両保険の被保険者(適用労働者)なっています。

 

ところが、これら労働保険には誤解が付きまとっていて、

@ 保険料が高い。

A 自社の事業では業務災害など起こらない

などを理由として、労働保険に加入しない事業主の方が依然としていらっしゃるようです。

 

また、『保険料が上がる』ことを恐れるのか、『当局に目をつけられる』と考えているのか、理由は定かではないが、業務災害や通勤災害に際して労災保険の使用をためらう事業主も多いようです。

 

以下、社会保険労務士として、若干の私見を述べてみたいと存じます。

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T−1 労災保険に加入しないリスク

1 労災保険料の試算

労災保険料が高いかどうかを検証するため、比較的保険料率の高い建築事業、中程度の機械器具製造業、保険料率の低い卸・小売業等を取り上げ、月収10万円20万円30万円の労働者(ボーナス2ヶ月分×2回/年)について保険料を算定してみました。

 なお、建築事業は、一般に有期事業として行われ、保険料は工事開始日から終了日までの期間分を一括納付します。
また、労務比率を使って労務費を算出します。
よって、給与から保険料を計算するのも、1年単位の保険料を計算するのも共に実情にそぐわない面がございます。
ですが、ここでは、機械器具製造業や卸・小売業との比較を容易にするため、建築業の工事期間をちょうど1年と仮置きし、かつ労働者の給与を基準として保険料を算出してみました。 
業      種 月   収  年   収  保 険 料 率  保 険 料 

1ヶ月

保険料 

建 築 業  10万円  160万円   13/1000 20,800円  1,733円
20万円  320万円  41,600円   3,467円
30万円  480万円  62,400円   5,200円
機械器具製造業 10万円  160万円   6.5/1000 10,400円   867円
20万円  320万円 20,800円   1,733円
30万円  480万円  31,200円   2,600円

卸・小売業、

飲食店、宿泊業

10万円  160万円   4/1000 6,400円   533円
20万円  320万円  12,800円   1,067円
30万円  480万円  19200円   1,600円
どうでしょう?本当に保険料は高いのでしょうか?高いと思っておられるとしたら、全員の分を1年分まとめて(あるいは3回に分割して)支払うから、そのように感じておられるのではないでしょうか?
建築業が高いのは、事故が多いからです。

卸・小売業等は、事故が少ない分、保険料が安くなっています。

 

事故が少ないからと保険に未加入でいて、たまたま業務災害や通勤災害が生起したら、その時はきっとお困りになるはずです。

未加入の事業主様は、次項も併せご検討のうえ、労災保険を見直して見られてはいかがでしょうか?

2 労災保険に加入しない場合のリスク

費用徴収制度という制度があり、加入手続きを怠っている間に業務・通勤災害が発生した場合、療養開始日から3年以内に支給事由の発生した保険給付額(療養及び介護に係る給付額を除く)の40%又は100%が徴収されます。

 

療養・介護に要した費用こそ徴収の対象にはなりませんが、休業・障害・死亡などに係る給付が含まれており、高額になることも覚悟しなければなりません。

 

なお徴収額は次の通り定められております。

保険関係成立届をめぐる指導等 徴   収   額 
保険関係成立届提出について、行政機関から指導等を受けている場合 

対象となる保険給付額×100%           

保険関係成立届提出について、行政機関から指導等は受けていないが、保険関係成立日から1年を経過している場合  対象となる保険給付額×40% 

 

3 社会保険労務士としての意見

労災保険は、実によく出来た保険です。保険料は、1での試算のとおり決して高くはありません。保険事故の少ない業界の保険料は安く、事故の多い業界の保険料は高く設定されています。また、保険料の額が小さい割には手厚い補償があります。

 

私は、企業側に立つ社労士です。労災保険に未加入の経営者様に強く進言します。

労災保険は、安くて良い保険です。労災保険には、必ず入ってください!

入らないリスクは大き過ぎます!

 

ここまで申し上げれば、ご自身や家族従業員、役員の方の補償が心配になる経営者の方もいらっしゃるでしょう。労災保険には、特別加入という制度がございます。中小企業であれば、ご自身や家族従業員、役員の方も保険に加入できます。一人親方も特別加入できます。
また、建設業界では、労災保険に特別加入していない事業主等の建設現場への立ち入りを認めない元請会社も増えています。ご自身の仕事を減らさないためにも、是非特別加入を考えてください。

 

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T−2 雇用保険に加入しないリスク

1 雇用保険料の試算

雇用保険料は、高いのか?それを検証する前提として、雇用保険料を試算して見ましょう。

 

雇用保険料率は、平成23年4月現在、次の通り定められております。業種により料率が異なるのは、離職率などを考慮したことによるものと考えられます。

  雇用保険料率  事業主負担分  労働者負担分 
一 般 の 事 業   15.5/1000  9.5/1000  6/1000
農林・清酒製造業   17.5/1000  10.5/1000  7/1000
建  設  業   18.5/1000  11.5/1000  7/1000

※ 失業等給付に係る保険料率は労使折半なのですが、事業主には、別に

二事業に係る負担金が課せられるので、労働者よりも保険料率が高いのです。

それでは、労災保険の場合と同様に月収10万円、20万円、30万円の労働者(ボーナス2ヶ月分×2回/年)について保険料(事業主負担額のみ)を算定してみます。

 

なお、計算に当たっては、日雇い労働者であるとか64歳以上の被保険者であるとかいった細かいことは考慮しないで、ざっくり計算してみます。

  月 収  年 収  保険料率  保険料  1ヶ月保険料 
一 般 の 事 業   10万円  160万円   9.5/1000  15,200円 1,267円
 20万円  320万円  30,400円  2,533円
 30万円  480万円  45,600円  3,780円

農林水産

   ・清酒製造業 

 10万円  160万円   10.5/1000  16,800円 1,400円
 20万円  320万円  33,600円  2,800円
 30万円  480万円  50,400円  4,200円
建   設   業   10万円  160万円   11.5/1000  18,400円  1,533円
 20万円  320万円  36,800円  3,067円
 30万円  480万円  55,200円  4,600円
どうでしょうか、高いでしょうか?大雑把に言って労働者に支払う賃金の1%相当と見ることも、定昇1回分と見ることも出来ましょう。

次項をあわせ考慮して、そろばんをはじいてみてください。

 なお、雇用保険の場合も労災保険と同様に、全従業員分を年1回(又は3回に分けて)まとめて納付するから、高いと感じる一面もあることは否めないでしょう。

 

2 雇用保険に加入しない場合のリスク

@ 従業員から、過去に遡って加入を求められる可能性があります。
もらえるはずの育児休業給付金失業手当がもらえないので、過去に遡って加入することを求められる可能性があります。過去に遡って加入する場合においても、一般には2年間しか遡ることができません。よって、正規に加入していた場合よりも受給額が少なくなる場合がありえます。その場合は差額分を別途請求される可能性も出てまいります。

A 育児休業取得の権利を有する者を合意退職させる場合は、退職により有用な労働力を失うこととなります。


B 保険に加入している場合よりも、従業員満足(ES)が低くとどまる可能性があります。

一般に、待遇が社会基準よりも低い場合は従業員の満足度(ES)が低く、社会の基準並み又はそれを上回る場合は満足度(ES)が高くなる傾向があります。

ESが高い場合は、従業員の定着率や会社に対する貢献意欲が高まりますが、低い場合は逆の傾向(適当に仕事する、退職するなど)を示すことが考えられます。

C 退職勧奨等に悪影響が出る可能性があります。

採用した従業員の勤務成績などが会社の要求に達しない場合、企業業績が悪化した場合、事業転換や事業場の移転を図る場合など、従業員に円満退職を求めなければならない場面に出会うことがありますね。

その場合、失業手当がある場合とない場合では、従業員の反応が異なることが予想されます。

D 助成金を受給することが出来ません。

国の助成金を受給できる場合でも、 雇用保険に加入していないがために受給できないことも少なくありません。

3 社会保険労務士としての意見

保険料の額、加入しない場合のリスクを合わせ考慮した場合、加入した方がよいと思います。それによって、事業主としての義務も果たせるのですから、加入しない手はないと思います。


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U 社会保険と企業経営

社会保険には、健康保険厚生年金保険があります。

社会保険は、多くの事業所・労働者に適用されるのですが、常時使用する従業員数が5人未満の個人事業所と、次に掲げる個人事業所(従業員規模は無関係)は、社会保険の強制適用を受けません。

<社会保険の適用除外>

@ 第1次産業(農林水産業)

A サービス業(飲食店・美容業・旅館業など)

B 法務専門サービス業(いわゆる士業)

C 宗務業(神社・教会など)

労働保険と同様に、適用事業所の労働者は一部の例外を除き被保険者となりますが、被保険者となるかどうかが問題になる労働形態の1つとして、パートタイマー等の労働者がいます。このことが、社会保険の適用問題を複雑にしていますが、これについては後述します。

 

社会保険は、労働保険と違って保険料がやや高額になるのが特徴ですが、加入義務のある事業所は、やはり加入すべきです。パートタイマー等については若干の考慮要素があります(後述)。

 

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U−1 社会保険に加入しないリスク

1 社会保険料の試算

社会保険料が高いかどうかを検証するため、労働保険と同様に、月収10万円、20万円、30万円の労働者(ボーナス2ヶ月分×2回/年)について保険料(事業主負担分のみ)を算定してみました。

 

なお、本来ならば標準報酬に保険料率を乗じて計算すべきですが、実収入に保険料率を乗じても大局判断には大きな問題を生じないので、実収入ベースで算定しております。また、介護保険料や児童手当拠出金は考慮外としておりますのでご了承ください。

月 収 

 (円)

年 収 

 (円)

 保     険     料     の     算     定
 

保険料

率(%) 

保険料(円)/年

 保険料(円)

/1ヶ月当たり

10万

160万

健康保険 

 4.725

 75,600

206,896

  6,300

 17,241

厚生年金 

 8.206

131,296

 10,941

20万 320万

健康保険 

 4.725 151,200

413,792

 12,600

 34,482

厚生年金 

  8.206 262,592  21,882
30万 480万

健康保険 

 4.725 226,800

620,688

 18,900  51,724

厚生年金 

  8.206 393,888  32,824

※1 保険料/1ヶ月当たり:年間保険料を12ヶ月で割って算出した月平均の保険料であり、ボーナス月でない通常月の保険料とは異なるので注意されたい。

 2 健康保険料率は、埼玉県の平成23年9月現在の保険料率を使用した。

労働保険料とは異なり、社会保険料が如何に高いかお分かりいただけたと思います。年間の社会保険料は、月例給与2ヶ月あるいは賃金の約13%に相当します。工夫できるものなら工夫したいものですね。 

 

2 社会保険に加入しない場合のリスク

@ 過去に遡って、社会保険への遡及加入を求められるほか、社会保険に加入しないことによる損害額の賠償を求められる恐れがあります。
例えば、傷病手当金・出産手当金、厚生年金額(例えば、老齢厚生年金、遺族厚生年金など)、社会保険に加入しなかったために支払った第3号被保険者の国民年金保険料など。

A 保険に加入している場合よりも、従業員満足(ES)が低くとどまる可能性があります。

一般に、待遇が社会基準よりも低い場合は従業員の満足度(ES)が低く、社会の基準並み又はそれを上回る場合は満足度(ES)が高くなる傾向があります。

ESが高い場合は、従業員の定着率や会社に対する貢献意欲が高まりますが、低い場合は逆の傾向を示すことが考えられます。

B 退職勧奨等に悪影響が出る可能性があります。

従業員の私傷病などにより、円満退職を要請せざるを得ない場合など、傷病手当金がある場合とない場合では、従業員の反応が異なったものになることが予想されます。

C 助成金を受給できない場合があります。

全部ではありませんが、社会保険に加入させるべき者を加入させていない場合、受給できない助成金が増加傾向にあります。 

3 社会保険料を最小にするための工夫

@ パートタイマーや60歳以上の再雇用者などは、正社員と比して労働時間を一定時間以上短くすることにより、被保険者としないことが出来ます。
収入が130万円未満のサラリーマンの妻などには、高い社会保険料の負担を嫌う者も見受けられます。

現在は、『1日又は1週間の労働時間が正社員の概ね3/4以下』若しくは『1ヶ月の労働日数が正社員の概ね3/4以下』のいずれかの条件を満たす労働者は、社会保険への加入を強制されることはほぼありません。

シフト制を組むなどの工夫により、パートなどを被保険者にしない工夫をすることが出来ます。

A この外、定昇時期を7月以降にする、俸給表を工夫する、4月〜6月に支払い期の来る残業を抑制するなどにより、出来るだけ標準報酬月額を低く抑え、社会保険料を少なくすることも可能です。

 

4 社会保険労務士としての意見

強制適用事業であれば、事業主としての社会的責任を果たす上でも、2項で述べたリスクを回避するためにも社会保険には加入しなければなりません。

 

とはいってもやはり社会保険料は高額です。従業員に支払う人件費=給与として計画し、その後社会保険料を捻出しようとすれば無理が生じます。労働・社会保険料のような法定福利厚生費は、当初から人件費として計上し、経営計画を立てることが肝要です。

 

厚労省では、社会保険未加入事業所への指導を強化するやに聞いております。行政官庁の検査で指摘されないよう、先手先手で手を打ちたいものです。

 

この際、パートタイマーや高齢の再雇用者を工夫により被保険者としないようにするか否かについては、利害得失を十分に考慮して決定されるよう希望します。サラリ−マンの妻のように従業員自身が希望しない場合はともかく、 それ以外の場合は加入した方が貢献意欲が増大するなどの効果があるからです。

 

なお、定昇の時期をずらす等の場合は、従業員の同意を得るなど、不利益変更のそしりを受けないよう、細心の注意を払ってください。

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V 労災保険・健康保険の適用
業務災害や交通事故に際して、労災保険や健康保険の使用をためらう方がいらっしゃると聞きます。

 

私は、かつて大手損害保険会社で交通事故損害賠償主任をしておりましたので、交通事故を例にとって、保険を使用すべきときに使用しないとどうなるかについてお話してみたいと思います。私の経験では、交通事故が起こった場合にも『労災保険は使わせない』、中には『健康保険を使わせない』などという、事業主様が時々いらっしゃいました。

これって、正しいでしょうか?相手に100%の過失があるときは、使わせなくても多くの場合問題ありません。自動車保険で100%賠償してくれるからです。

でも、「使わせてあげればいいのにな!」と思う事例も多々あります。ここに1つの事例を挙げてみましょう。労災保険を例にとりますが、健康保険の場合にも方向としては、ほぼ同様の結果となります(ただし、金額はかなり異なります)。


 

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V−1 通勤災害で労災保険を使用しなかった事例

実事例をありのままに提示しますと、プライバシーを侵害するおそれがありますので、本事例は多くの設想を加えております。

 

1 交通事故の状況及び治療経過の概要 

夜明け前の薄暗い中、信号のない横断歩道の近く(約15m) を横断していた通勤途上の歩行者が、車両に接触、下肢を複雑骨折しました。

 

事故の原因確認(調査)をしないと過失割合は決定できませんが、私は被害者にも大きな過失がある可能性が大きいと判断労災保険の使用を要請しました。その会社は、知らない人はいないのではないか思われるほどの大会社でしたが、労災保険の使用を拒否しました。通勤災害ですから、保険料が上がる可能性はないのにもかかわらずです。

 

原因確認(調査)の結果、被害者の過失割合35%と出ました。歩行者に35%と聞いてびっくりする方もいらっしゃるかもしれませんが、特別の要素は何もありません。「信号のない横断歩道の近くを横断(過失:30%)+薄暗い(過失:+5%……運転者は薄暗いと発見しにくい)」ということだけです。

 

この被害者は、約6ヶ月入院1年6ヶ月で治癒しました。幸い後遺障害は出ませんでしたが、治癒後も多少の痛みが残存しました。

2 賠償額の検討 

この方の賠償額をざっくり見てみましょう。 この方は、労災保険を使用しなかったのですが、使用した場合と比べられるよう、労災使用の場合についても試算してみました。

(単位:万円)

  労災を使用しない場合   労災を使用する場合
損害額

過失

相殺額

差 引

受取額

損害額

労 災

支払額

過 失

相殺額

差 引

受取額

治療費  600  210 -210 360  126  126  0
休業損害  420  147 273 420  88  147  361
慰謝料  200  70 130  200  0  70  130
入院諸雑費  20  7  13  20    7  13
休業特別支給金           84    84
合  計   1240    206  1000     588

※1 治療費は、労災保険を使用しない場合、 600万円かかりますが、労災を使用すると6割の360万円となります。労災を使用しない場合、保険会社は病院に600万円を支払いますが、過失相殺分の35%(210万円)は、被害者が将来負担しなければなりません(その分慰謝料などが少なくなる)。

   労災を使用すると、労災保険は病院に全額(360万円)支払いますが、被害者過失分の35%(126万円)を差し引いて、234万円を保険会社に請求します。したがって、実質的には労災保険が126万円、保険会社が234万円支払ったことになります。ここで労災の支払い分126万円は、丁度過失相殺額に相当(上の表で労災支払額=過失相殺額=126万円となっているのをご確認ください。)しますので、過失相殺分を労災保険が支払ってくれたに等しい結果となります。よって、害者の治療費負担がなくなります。よって、慰謝料などから治療費を差し引かれるといったことはなくなります。

 

 2 休業損害は、少しややこしくて次の通りとなります。

   この方の月収は35万円で、1年間休業しました。その後は何とか働けました。

  よって、休業損害額は、35万円×12ヶ月=420万円となります。

   労災保険は、休業損害額の60%(420万円×0.6=252万円……実際は、休業4日目からの支給になるのですが、これを無視します。)を被害者に支払いますが、その内、加害者過失分の65%(252万円×0.65=164万円)は保険会社に請求してきますので、労災保険の実質支払額は、88万円(=252万円−164万円)となり、残りの164万円は、実質的に保険会社の前払い金となります。

   保険会社は、損害額:420万円−過失相殺額:147万円(=420万円×0.35)−前払い金:164万円=109万円を改めて支払うこととなります。

   被害者の受取額は、労災保険からの受領額:252万円+改めて支払う額:109万円=361万円となります。

 

 3 慰謝料の額は、単純な計算式はありません。表を引くかコンピュータに計算させて出します。 入院6ヶ月、通院1年の場合の慰謝料は、約200万円とでます。

   この内、35%(70万円)を過失相殺して、130万円を支払います。労災保険から慰謝料の支払いはありません。

 

 4 入院諸雑費は、1100円/日×183日(入院日数)=20万円です。35%(7万円)を過失相殺して、13万円を支払います。

 

 5 休業特別支給金(休業損害額の20%;420万円×0.2=84万円)は、労災保険独自の給付で過失相殺はありません。

上の表をご覧になってどう思われますか?この方は、お怪我で働けなくて休業損害だけでも420万円もあります。労災保険を使用しない場合、ご自分にも過失があるために休業損害と慰謝料などを併せても206万円しか受け取れません。ご自分にも過失があるから当然(=自業自得)だと思いますか?

 

もしもこの方が、加害者(自動車保険)から賠償を受けずに、通勤災害として、労災保険からのみ補償を受けたとしたら、いくら受け取ることが出来るでしょう。

 

休業給付(420万円×60%=252万円)と休業特別支給金(420万円×20%=84万円)の合計336万円を受け取ることが出来ます。休業損害額全額とは参りませんが、206万円よりははるかに多いです。なお、この場合でも、労災保険は治療費(療養給付)と休業給付額の65%(加害者負担分)を保険会社に請求します。

 

ここで申し上げたいことは、通勤災害は労災保険で補償されています。少なくても被害者に過失があり、怪我が大きい場合は、労災保険を使うべきであると思いますが、いかがでしょうか?

 

なお、労災保険を使用して、自動車保険から賠償を受ける場合、このケースでは588万円を受け取ることが出来ます(上表参照)。

被害者の受取額(治療費を除く)は、労災保険を使用すれば588万円使用しなければ206万円、これが現実です。

企業の労務管理担当者は、よろしくご理解下さい。

 3 交通事故をめぐる初歩的な間違い 

私どもが電話で被害者の会社とお話していますと、よく次のような部外者のお話が漏れてきます。

@ 「自動車事故には相手がいる。相手(の保険)に支払わせればよいから、労災保険(健康保険)を使用する必要はない。」

この記事をご覧になった方は、もうお分かりと思いますが、被害者に過失がない場合(例えば、停止中に追突された場合など)や怪我が軽く自賠責保険で十分まかなえる場合は、それで結構です。

被害者が大きな怪我をしており、かつ過失がある場合や自損事故の場合は、決して正しいとはいえません。

A 「自動車事故は、『自賠先行』が原則。自賠責保険で足りなくなった後、労災保険や健康保険を使えばよい。」

当初自賠責保険で支払った治療費にも過失相殺が適用されるので、全くナンセンスです。事故にあった場合、手術の段階でもっとも大きなお金がかかります。このとき社会保険を適用していなければ、大きな効果は期待できません。『自賠先行』は、自賠責保険の範囲内で損害賠償が完結する場合のみ、正しい原則です。

 

よく考えてください。自賠先行といいますが、交通事故の対応においては、多くの場合自賠責保険と任意保険を併せて使用しますので、結果的には任意保険を含む『自動車保険先行』になっています。

 

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V−2 労災保険を巡る誤解

1 保険料が高くなる?

労災保険を使用すると保険料が高くなるので使用をためらうという事例がよくあります。あながち間違いとも言えませんが、誤解も多々あります。例えば、

@ 保険料が変化するのは、業務災害の場合だけです。

換言すれば、通勤災害の場合は上がりません。通勤災害は事業主の責任ではないからです。
A 保険料が変化するのは、メリット制適用事業場だけです。
        ※ メリット制の適用要件……やや複雑。読み飛ばして結構です。
            連続する3年度中の各年度において、次のいずれかを満たす事業で、当該3年度の最終年度末において保険関係成立後3年以上経過している事業場
          イ 100人以上の労働者を使用する事業場
         

ロ 20人〜100人未満の事業場で次式を満足する労働者数を有する事業場

              労働者数≧0.4/(労災保険率−0.6/1000)  
              EX.機械器具製造業(労災保険率:6.5/1000)の場合
                 

労働者数≧0.4/(6.5/1000−0.6/1000)=67.8人 

即ち、68人以上の事業場が対象となります。

         

ハ 一括有期事業(建設の事業及び立木伐採の事業)で、

  確定保険料の額が100万円以上の事業場 

 

2 労働基準監督署の指導が厳しくなる。

指導が厳しくなるのは、現実問題としては事故多発事業場重大事故の発生した事業場などではないでしょうか?

決めるのは行政機関ですから、保証の限りではありませんが……。

そんな心配よりも、折角かけた保険ですから、有効に活用してはいかがでしょうか。

3 労災保険を使用するかどうかの決定権は、企業側にある?

労災保険料は、全額事業場(企業)が収めています。そのせいか、「労災保険を使用するか否かの決定権は、企業側にある」と考えている事業主様もいらっしゃいます。

 

これは間違いです。決定権は、被災労働者にあります。ただ、労災保険を申請するためには、企業側の協力を必要とすることが多く、困った被災労働者が労基署に相談することがしばしばあります。

誤解のないように言っておきますが、労災保険が適用できるかどうかは、労働基準監督署が判断します。

 

 

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W まとめ

1 労働保険への加入

労働保険には、必ず加入すべきです。

<理由>

@ 労働保険料(労災保険料+雇用保険料)は、必ずしも高くない

A 加入しない場合は、リスクが大きい。リスクとして、従業員からの遡及加入要求損害賠償の請求労基署の臨検などが考えられる。

B 加入によって、企業としての社会的責任が果たせるほか、従業員満足も大きくなる。

2 社会保険への加入

事業主としての義務である以上、加入すべきです。

しかしながら、保険料が高いので、パートなどの加入の是非を真剣に検討するほか、保険料を出来るだけ小さく押さえる工夫を行うことが肝要である。

<理由>

@ 社会保険への加入は、事業主の責務である。

A 加入しない場合は、リスクが大きい。リスクとして、従業員からの遡及加入要求損害賠償の請求、行政官庁の検査・指導などが考えられる。

B 加入によって、企業としての社会的責任が果たせるほか、従業員満足も大きくなる。

 

4 労災保険・健康保険の使用

保険事故が生起した場合は、使用をためらうべきではない

<理由> 

@ 使用の決定権は、従業員にあり、強権により使用させない場合は、行政の指導、従業員の損害賠償請求などがなされる恐れがある。

A 労災保険・健康保険は、法定福利厚生の一環であり、これを使用させない場合は、従業員の企業に対する帰属意識貢献意欲を低下させる恐れがある。

 

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