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ここでは、変形期間1ヶ月の場合を例にとって具体的にご説明します。
それでは、図3をご覧ください。
1 日々の時間外労働の算定
通常の労働時間制の場合は、1日8時間を超える労働が時間外労働でした。
変形労働時間制の場合の、日々の時間外労働の算定要領は次のとおりです。通常の労働時間制による場合との違いをよくご理解ください。
1 所定労働時間が8時間超えの場合 → 所定労働時間超えの労働が時間外労働 2 所定労働時間が8時間未満の場合 → 8時間超えの労働が時間外労働 |
よって日々の法内時間外労働(法内超勤)と時間外労働の時間は、所定休日である土曜日を除き、図3のとおりです。
ただし、現段階では、31日は、法内超勤、時間外ともに各1時間と考えておいてください。
赤字の0.1時間と1.9時間については、変形期間に応ずる時間外労働の算定について説明する際、ご説明致します。
2 週の時間外労働の算定
変形労働時間制の場合の、週の時間外労働の算定要領は次のとおりです。通常の労働時間制による場合との違いをよくご理解ください。
1 週の所定労働時間が40時間超えの場合 → 所定労働時間超えの労働が時間外労働 2 週の所定労働時間が40時間未満の場合 → 40時間超えの労働が時間外労働 |
この原則を当てはめて計算すると、週の法内超勤と時間外労働時間は、図3の「週の合計欄」のとおりとなります。
3 変形期間に応ずる時間外労働の算定
1ヶ月単位の変形労働時間制は、変形期間の労働時間を平均して、1週間の労働時間が法定労働時間を超えないようにしなければなりません。よって、変形期間を1ヶ月とする場合は、次式で計算される『法定労働時間の総枠』を超えた時間が時間外労働となります。
法定労働時間の総枠の算定式は、下記の通りです。
40h(※)×変形期間の暦日数/7日 |
(※) 常時10人未満の労働者を使用する零細規模の商業・サービス業については、週の法定労働時間が44時間と定められているため、40hを44hと読み替えてください。
それでは、上の式に基づき、法定労働時間の総枠を計算して みます。
法定労働時間の総枠は、月の暦日数によって異なります。
設例に示した月は、大の月で1か月の暦日数は31日ですから、
法定労働時間の総枠は、40時間31日/7日=177.1時間となり、
この時間を超える労働が変形期間の時間外労働となります。
図3の「1〜4週までの累計欄」から、4週までの労働時間は、所定内労働が151時間、法内超勤が11時間です。
よって、時間外労働に該当しない労働時間は、162時間です。
これに30日の時間外労働でない時間を加えると、170時間です。
ところが、31日の時間外労働でない時間(所定内7時間、法内超勤1時間)を加えると、178時間となり、法定労働時間の総枠を0.9時間だけ超過します。
よって、31日の労働時間は、暫定的に法内超勤1時間、時間外1時間としていましたが、
変形期間の時間外労働時間算定の結果として、
法内超勤を0.1時間、時間外を1.9時間と修正することになります。
これで、図3の31日の欄(赤字)が、法内超勤0.1時間、時間外が1.9時間となっている理由がわかりましたね。
以上で、時間外労働の計算要領の説明は終わりです。
最後に、もう一度図3をご覧ください。
この設例では、31日まで「変形期間の時間外労働」が出現しませんでした。
何故でしょう?
① 所定外労働時間(法内超勤+時間外)が、16時間と短い時間を設定していること
② 法定労働時間の総枠(177時間)に比し、所定労働時間(165時間)が12時間も少ないこと
(これにより、約12時間の所定外労働が時間外とならず、法内超勤となる)
が主な理由です。
筆者が見てきた実際の会社では、所定外労働がもっと多いし、
所定労働時間は法定労働時間の総枠にもっと近く設定されています。
よって、多くの会社では、「変形期間の時間外労働」がもっともっと早い時期に出現することになるのです。
設例のように「変形期間の時間外労働が少ない事例」は稀だというのが筆者の実感です。
決して、変形期間の時間外は、月末まで出現しないなどと考えないようにしてください。
このように、原則どおり算定しようとすると、時間外労働の算定は、大変な作業です。計算ミスを生じるかもしれません。やはり、“Simple is the best.”です。
次項で算定の簡素化(複雑な計算をしなくてすむ方法)について述べます。
以上、かいつまんで要点をご説明いたしました。
労働時間の算定は難しいものではありませんが、慣れが必要です。
筆者が社労士としてみる限り、多くの事業所で算定誤りが見られます。
労働時間の算定誤りは、残業代の算定誤りにつながり、
最終的には個別労働紛争につながることも少なくありません。
最初は、社労士に相談するのが最も近道です。
社労士は、助成金についても提案してくれる場合が多いと思います。
助成金の受給できれば、負担がゼロになるどころか、通常はたっぷりとおつりが来ます。
「案じるよりも産むが安し」、ご相談は無料です。
どうぞ、労働紛争とは無縁の強い労務管理を目指してください。
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