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実事例をありのままに提示しますと、プライバシーを侵害するおそれがありますので、本事例は多くの設想を加えております。
1 交通事故の状況及び治療経過の概要
夜明け前の薄暗い中、信号のない横断歩道の近く(約15m) を横断していた通勤途上の歩行者が、車両に接触、下肢を複雑骨折しました。
事故の原因確認(調査)をしないと過失割合は決定できませんが、私は被害者にも大きな過失がある可能性が大きいと判断、労災保険の使用を要請しました。その会社は、知らない人はいないのではないか思われるほどの大会社でしたが、労災保険の使用を拒否しました。通勤災害ですから、保険料が上がる可能性はないのにもかかわらずです。
原因確認(調査)の結果、被害者の過失割合は、35%と出ました。歩行者に35%と聞いてびっくりする方もいらっしゃるかもしれませんが、特別の要素は何もありません。「信号のない横断歩道の近くを横断(過失:30%)+薄暗い(過失:+5%……運転者は薄暗いと発見しにくい)」ということだけです。
この被害者は、約6ヶ月入院、1年6ヶ月で治癒しました。幸い後遺障害は出ませんでしたが、治癒後も多少の痛みが残存しました。
2 賠償額の検討
この方の賠償額をざっくり見てみましょう。 この方は、労災保険を使用しなかったのですが、使用した場合と比べられるよう、労災使用の場合についても試算してみました。
(単位:万円)
労災を使用しない場合 | 労災を使用する場合 | ||||||
損害額 | 過失 相殺額 | 差 引 受取額 | 損害額 | 労 災 支払額 | 過 失 相殺額 | 差 引 受取額 | |
治療費 | 600 | 210 | -210 | 360 | 126 | 126 | 0 |
休業損害 | 420 | 147 | 273 | 420 | 88 | 147 | 361 |
慰謝料 | 200 | 70 | 130 | 200 | 0 | 70 | 130 |
入院諸雑費 | 20 | 7 | 13 | 20 | 7 | 13 | |
休業特別支給金 | 84 | 84 | |||||
合 計 | 1240 | 206 | 1000 | 588 | |||
※1 治療費は、労災保険を使用しない場合、 600万円かかりますが、労災を使用すると6割の360万円となります。労災を使用しない場合、保険会社は病院に600万円を支払いますが、過失相殺分の35%(210万円)は、被害者が将来負担しなければなりません(その分慰謝料などが少なくなる)。 労災を使用すると、労災保険は病院に全額(360万円)支払いますが、被害者過失分の35%(126万円)を差し引いて、234万円を保険会社に請求します。したがって、実質的には労災保険が126万円、保険会社が234万円支払ったことになります。ここで労災の支払い分126万円は、丁度過失相殺額に相当(上の表で労災支払額=過失相殺額=126万円となっているのをご確認ください。)しますので、過失相殺分を労災保険が支払ってくれたに等しい結果となります。よって、被害者の治療費負担がなくなります。よって、慰謝料などから治療費を差し引かれるといったことはなくなります。
2 休業損害は、少しややこしくて次の通りとなります。 この方の月収は35万円で、1年間休業しました。その後は何とか働けました。 よって、休業損害額は、35万円×12ヶ月=420万円となります。 労災保険は、休業損害額の60%(420万円×0.6=252万円……実際は、休業4日目からの支給になるのですが、これを無視します。)を被害者に支払いますが、その内、加害者過失分の65%(252万円×0.65=164万円)は保険会社に請求してきますので、労災保険の実質支払額は、88万円(=252万円−164万円)となり、残りの164万円は、実質的に保険会社の前払い金となります。 保険会社は、損害額:420万円−過失相殺額:147万円(=420万円×0.35)−前払い金:164万円=109万円を改めて支払うこととなります。 被害者の受取額は、労災保険からの受領額:252万円+改めて支払う額:109万円=361万円となります。
3 慰謝料の額は、単純な計算式はありません。表を引くかコンピュータに計算させて出します。 入院6ヶ月、通院1年の場合の慰謝料は、約200万円とでます。 この内、35%(70万円)を過失相殺して、130万円を支払います。労災保険から慰謝料の支払いはありません。
4 入院諸雑費は、1100円/日×183日(入院日数)=20万円です。35%(7万円)を過失相殺して、13万円を支払います。
5 休業特別支給金(休業損害額の20%;420万円×0.2=84万円)は、労災保険独自の給付で過失相殺はありません。 |
上の表をご覧になってどう思われますか?この方は、お怪我で働けなくて休業損害だけでも420万円もあります。労災保険を使用しない場合、ご自分にも過失があるために休業損害と慰謝料などを併せても206万円しか受け取れません。ご自分にも過失があるから当然(=自業自得)だと思いますか?
もしもこの方が、加害者(自動車保険)から賠償を受けずに、通勤災害として、労災保険からのみ補償を受けたとしたら、いくら受け取ることが出来るでしょう。
休業給付(420万円×60%=252万円)と休業特別支給金(420万円×20%=84万円)の合計336万円を受け取ることが出来ます。休業損害額全額とは参りませんが、206万円よりははるかに多いです。なお、この場合でも、労災保険は治療費(療養給付)と休業給付額の65%(加害者負担分)を保険会社に請求します。
ここで申し上げたいことは、通勤災害は労災保険で補償されています。少なくても被害者に過失があり、怪我が大きい場合は、労災保険を使うべきであると思いますが、いかがでしょうか?
なお、労災保険を使用して、自動車保険から賠償を受ける場合、このケースでは588万円を受け取ることが出来ます(上表参照)。
被害者の受取額(治療費を除く)は、労災保険を使用すれば588万円、使用しなければ206万円、これが現実です。
企業の労務管理担当者は、よろしくご理解下さい。
3 交通事故をめぐる初歩的な間違い
私どもが電話で被害者の会社とお話していますと、よく次のような部外者のお話が漏れてきます。
① 「自動車事故には相手がいる。相手(の保険)に支払わせればよいから、労災保険(健康保険)を使用する必要はない。」
この記事をご覧になった方は、もうお分かりと思いますが、被害者に過失がない場合(例えば、停止中に追突された場合など)や怪我が軽く自賠責保険で十分まかなえる場合は、それで結構です。
被害者が大きな怪我をしており、かつ過失がある場合や自損事故の場合は、決して正しいとはいえません。
② 「自動車事故は、『自賠先行』が原則。自賠責保険で足りなくなった後、労災保険や健康保険を使えばよい。」
当初自賠責保険で支払った治療費にも過失相殺が適用されるので、全くナンセンスです。事故にあった場合、手術の段階でもっとも大きなお金がかかります。このとき社会保険を適用していなければ、大きな効果は期待できません。『自賠先行』は、自賠責保険の範囲内で損害賠償が完結する場合のみ、正しい原則です。
よく考えてください。自賠先行といいますが、交通事故の対応においては、多くの場合自賠責保険と任意保険を併せて使用しますので、結果的には任意保険を含む『自動車保険先行』になっています。
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