Ⅳ−2 会社側の言い分と対応策

会社側の言い分


  • 就業規則で残業は事前承認制(止むを得ない場合に限り事後承認可)を採用している。

 

  • 当該従業員は、過去において残業を申請したことがなく、また、「早く来る必要はない」「終業後は速やかに退社すること」など、残業をしないよう指導しており、残業代の請求は認められない。

 

  • 人事考課において“量的成果:劣る”と評価されているなど、当該従業員の仕事は一般に遅い。

 

始業前や終業後の時間外労働があるとしても、それは当人の能力不足を補うための自主的なものである。

 

  • タイムカードは勤怠管理に使用しているが、残業時間の管理には馴染まないものである。

交通事情を考慮して、始業前30分以上早く出勤する者や終業後も友人と待ち合わせをしたりやゲームなどを楽しんだりする者もいるからである。

会社側の対応策


1 代替案の列挙

会社側の代替案(オプション)として、次の2案を列挙し検討する。

① 労働者側の主張を否定し、全面的に争う。     ……O−1

② 決定的な争いを避け、妥協により早期解決を図る。……O−2

※ O−1、O−2の『O』はオプションの略。例えばO−1は、オー・ワンと呼称する。
 

2 各代替案の分析

(1) O−1 (全面対決案)

本代替案の狙いは、就業規則や上司の指導を無視して自主的に行ったにすぎない残業代の請求企図を破砕し、社内の規律を引き締め、同種事案の再発を防止するにある。

 

よって、会社としては、訴訟に発展することを視野に入れ、一切の妥協を拒否することとなろう。よって、あっせん案は拒否(あっせんへの不参加を含む)、労働審判がなされる場合も異議を申し立てて訴訟に移行することとなろう。

 

この際、あっせん、労働審判、裁判の各段階を通じ、以下の3点を一貫して主張し、残業の存在そのものを否定(時間外労働があるとしてもそれは能力不足を補うための自主的なもの)することとなろう。

  • 残業は事前承認制を原則としているが、一度たりとも当該労働者から残業の申請がなされた事実がない
  • 再三にわたり、残業をしないように指導している
  • タイムカードは、勤怠管理のために設置しているものであり、残業時間の管理には馴染まない

 

これに対し労働者側は、「仕事が遅いのなら早めに出勤しろ」と指導されたこと、また残業中に上司からねぎらいの言葉をかけられたことなどを根拠に、黙示の指示による残業であったと主張することとなろう。

また訴訟に移行する場合、遅延損害金(年12.5%)及び請求金額と同額の付加金の支払いを併せ請求する公算が大きい。

 

裁判の結果、双方の主張がどの程度認められるかは不透明である。

時間外労働は、労働者の自主的残業であるとの主張が認められる可能性もある。

しかしながら、会社側が早出出勤の指導時間外労働に対する慰労などを全面的に否定できない場合、黙示の残業命令があったと認定される公算も否定できない。

また、タイムレコーダ以外に、労働者の労働時間の記録がないのも弱点である。

残業代3年分の主張に対しては、時効を援用し、最大でも2年分の支払いが限度とを主張することとなろう。

 

労働者側の主張(黙示の残業命令)が全面的に求められた場合、残業代のほか、遅延損害金更には付加金の支払いが必要となる事態も考えられる(この場合のおいても残業代の時間当たり単価は、会社側の主張が認められるであろう)。

 

いずれの場合においても、裁判に全面勝訴する保証はなく、費やする時間的・金銭的損害も無視しがたい。

一方、敗訴した場合、社内の規律や士気に及ぼす影響には無視できないものがある。

 

(2) O−2 (妥協による早期解決案)

本代替案の狙いは、勝敗が不透明で、時間的・金銭的負担の大きい裁判をさけて、金銭的解決を図るにある。

 

この場合においても、O−1と同様に「時間外労働があるとしても、それは能力不足を補うための自主的残業であること」「タイムカードは、勤怠管理のためのものであり、残業時間の把握には馴染まないこと」を主張することとなろう。

 

一方、黙示の残業指示がある等の労働者側の主張に対しては、無承認残業である等とやわらかく反論するに留め、妥協の余地を残すこととなろう。

また、「3年分の残業代の請求に対しては、時効を援用し2年分以下とすること」、「賃金の時間単価は、算定の誤りを正し、1,207円」とするよう主張すれば、これは認定されよう。

残業時間については、労働者側の主張を全面的に認めるわけには参らないものの、調停案に沿って解決を図ることとなろう。

 

残業時間:2.5時間/日(労働者側の主張どおり)、賃金の時間単価:1,207円、残業代の算定対象期間:2年として計算すると、労働者側の請求額は1,968,919円となる。

しかしながら、会社側が「自主的残業である」、「タイムカードの記録は残業時間の管理を目的としたものではない」と主張することにより、あっせん案では、残業時間はより小さく削り込まれることが期待できよう

 

なお、残業の事前承認制(止むを得ない場合に限り事後承認可)と、無許可残業の禁止を徹底することにより、同種事案の再発を防止することは可能と考えられる。

 

3 結 論

 

(1) 採用案(会社の方針)

決定的なを避け、妥協により早期解決(金銭的解決)を図る(O-2)

(2) 理 由

  • 労働者側と全面対決し、裁判を戦ったとしても確実に勝訴できるとの確証がない。
  • 労働者側も継続勤務を希望しており、リーズナブルな金額での金銭的解決が期待できる。
  • 残業の事前承認制(止むを得ない場合に限り事後承認可)と、無許可残業の禁止を徹底することにより、同種事案の再発防止は可能である。

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